第102師団 (日本軍)

第102師団：フィリピン戦線における孤高の戦い

第102師団は、1944年（昭和19年）5月に策定された「十一号作戦準備」に基づき、フィリピンのビサヤ諸島において編成された大日本帝国陸軍の師団です。この師団は、4個の独立混成旅団を基幹として、各々を師団に改編するという特殊な形で誕生しました。

編成と特徴

1944年6月15日、軍令陸甲下令により、ビサヤ諸島で治安作戦に従事していた独立混成第31旅団を基幹に、内地で仮編成された2個歩兵大隊と師団後方部隊を統合し、7月10日に編成を完了しました。師団の編成は、2個歩兵旅団が指揮する8個独立歩兵大隊を中核とし、各部隊を島嶼ごとに分散配置できる柔軟性を持つ点が特徴です。

各独立歩兵大隊は約990名で構成され、4個歩兵中隊、銃砲隊（機関銃中隊、歩兵砲小隊）、作業隊（手作業小隊）が含まれていました。師団砲兵は、鹵獲した米軍の野砲と迫撃砲を装備していましたが、機動性に欠けていました。工兵部隊は、飛行場速成のために10個工兵中隊という特異な編制をとり、特設飛行場設定隊も指揮下に入れられました。輜重隊は、現地で徴発した自動車を使用しており、物資輸送に支障をきたす状況でした。また、内地から派遣された部隊の一部は、ルソン島に到着後、輸送船便がなくなり、そのまま同島で戦闘に参加することになりました。

戦闘と終戦

師団長は着任後、司令部をセブ島セブに置き、歩兵旅団の主力をパナイ島とセブ島南部に配置し、治安作戦と飛行場建設を命じました。1944年8月初旬には、新設された第35軍の戦闘序列に編入されました。

10月中旬に米軍がレイテ島に上陸すると、「捷一号作戦」が発動され、第35軍も「鈴号作戦」を発令しました。師団からは2個大隊がレイテ島へ急派され、レイテ島の戦いに参加しました。しかし、米軍の圧倒的な火力に押され、後方へ撤退せざるを得なくなりました。その後、師団長は残存兵力を率いてレイテ島に上陸し、ピナ山付近で他の部隊を指揮下に置き、第1師団の右背部を掩護しました。

レイテ島の戦況が悪化したため、12月下旬に師団長は撤退を決意し、1945年1月にセブ島へ帰還しました。この撤退は第35軍の許可を得ない独断行動であり、第35軍司令官の鈴木宗作中将の怒りを買い、師団長と参謀長は一時指揮権を停止され、後に謹慎処分を受けました。

1945年2月から米軍によるビサヤ諸島への侵攻が開始され、3月下旬にはセブ島への上陸が行われました。師団の各部隊は、既存の陣地や山岳に立てこもり抵抗を続けましたが、やがて自活を強いられ、多くの戦病死者を出しながら終戦を迎えました。1945年8月24日に停戦が成立しました。

師団概要

歴代師団長

福栄真平 中将：1944年6月21日 - 終戦

参謀長

和田俐 大佐：1944年6月21日 - 終戦

最終司令部構成

参謀長：和田俐大佐
参謀：渡辺英海大佐
参謀：丸山正寅中佐
参謀：有富重勝中佐
参謀：鈴木清中佐
参謀：金子正二少佐
高級副官：清水高蔵少佐

最終所属部隊

歩兵第77旅団（熊本）：河野毅中将
独立歩兵第170大隊：戸塚良一中佐
独立歩兵第171大隊：田辺侃二中佐
独立歩兵第172大隊：山口正一大佐
独立歩兵第354大隊：堀久謙少佐
歩兵第77旅団通信隊：中村秀大尉
歩兵第77旅団作業隊：川田清中尉
歩兵第78旅団（熊本）：万城目武雄少将
独立歩兵第169大隊：西村茂中佐
独立歩兵第173大隊：大西精一中佐
独立歩兵第174大隊：尾家刢大佐
独立歩兵第355大隊：野瀬幸雄少佐
歩兵第78旅団通信隊：四家肇中尉
歩兵第78旅団作業隊：小堀重次大尉
第102師団砲兵隊：斎藤正一少佐
第102師団工兵隊：武田喜久雄少佐
第102師団通信隊：山根一郎少佐
第102師団輜重隊：正角竹次郎少佐
第102師団野戦病院：
第102師団病馬廠：山井忠獣医大尉
第102師団防疫給水部：鈴木政雄軍医少佐

参考文献

戦史叢書・第41巻 捷号陸軍作戦（1） （防衛庁防衛研修所戦史部編・朝雲新聞社）
戦史叢書・第60巻 捷号陸軍作戦（2） （防衛庁防衛研修所戦史部編・朝雲新聞社）
『レイテ戦記』大岡昇平全集9・10巻、筑摩書房、1995年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

関連項目

レイテ島の戦い
ビサヤ諸島の戦い
大日本帝国陸軍師団一覧

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