第124師団 (日本軍)

第124師団：満洲の最前線で戦った知られざる師団

第124師団は、太平洋戦争末期の1945年1月、満洲における防衛強化を目的として編成された大日本帝国陸軍の師団の一つです。多くの師団が南方戦線や本土決戦準備に転用される中、満洲の守りを固めるために新設されました。

編成と装備

第124師団は、第1・第2・第11国境守備隊などの人員や、朝鮮半島へ転出した第111師団の残留者を中心に編成されました。1945年3月30日に編成を完了し、第5軍に編入され、牡丹江正面の国境警備を担当しました。

当初、師団砲兵隊は小規模でしたが、同年7月に野砲兵第116連隊へと改編され、戦力増強が図られました。また、歩兵連隊から人員を集め、師団挺進大隊を新設しました。

最終的な編制定員は約15,000人となり、現地応召者や朝鮮人日本兵を加えてほぼ充足状態に達しました。しかし、装備は不足しており、砲兵連隊は四一式山砲、九〇式野砲、15cm榴弾砲が混成で合計24門しかありませんでした。歩兵砲も各歩兵連隊に通常の半数の歩兵砲中隊（連隊砲・速射砲各2門）があるのみで、機関銃や弾薬も不足していました。人員の練度も低く、常備師団である第12師団と比較して戦力は35%程度と見積もられていました。

ソ連対日参戦と激戦

1945年8月9日、ソ連対日参戦が開始されると、第124師団は第5軍の第一線部隊として、穆棱西方に主力を配置し、ソ連軍の進攻を迎え撃ちました。野戦重砲兵第20連隊などの配属を受けましたが、圧倒的な戦力差のあるソ連第5軍（12個歩兵師団・5個戦車旅団基幹）に対し、ほぼ単独で戦うことを強いられました。

開戦と同時に国境地帯の前哨陣地が奇襲攻撃を受け、8月12日には師団主力陣地へもソ連軍の総攻撃が始まりました。他の師団からの増援部隊とともに善戦しましたが、8月13日には瀬尾歩兵第273連隊長が戦死するなど、第一線が突破され、陣内戦闘へと移行しました。各陣地は次々と全滅し、8月14日には師団内の通信もほぼ途絶え、統一指揮が困難な状況に陥りました。

師団長の椎名正健中将は、玉砕を覚悟して夜戦による斬り込み戦闘を準備しましたが、8月15日に玉音放送を受信したため、攻撃は延期されました。無線通信で状況を確認した後、残存部隊は敦化方面へ後退し、寧安付近でソ連軍と交渉し、8月23日に武装解除されました。

その後の悲劇

生き残った将兵はシベリアに抑留され、過酷な環境下で多くの者が命を落としました。戦死者とシベリア抑留による死者を合わせると、約4,000人が死亡したと推定されています。

師団概要

歴代師団長

椎名正健 中将：1945年（昭和20年）1月10日 - 終戦

参謀長

岩崎豊晴 中佐：1945年（昭和20年）1月25日 - 終戦

最終司令部構成

参謀長：岩崎豊晴大佐
参謀：河野祐教少佐

最終所属部隊

歩兵第271連隊（仙台）：安土武比古大佐
歩兵第272連隊（会津若松）：石川栄治大佐
歩兵第273連隊（山形）：瀬尾浩大佐
野砲兵第124連隊：瀧波幸助大佐 (ただし、中山 (1990) によれば野砲兵第116連隊)
第124師団挺進大隊
第124師団通信隊
第124師団工兵隊
第124師団輜重隊
第124師団兵器勤務隊

まとめ

第124師団は、戦力不足ながらも満洲の最前線でソ連軍と激戦を繰り広げました。その戦いは、太平洋戦争末期の混乱と悲劇を象徴するものであり、忘れてはならない歴史の一部です。

参考文献

秦郁彦（編） 『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫（編著） 『帝国陸軍編制総覧』 芙蓉書房出版、1987年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
『別冊歴史読本 戦記シリーズNo.32 太平洋戦争師団戦史』、新人物往来社、1996年。
中山隆志 『満洲1945・8・9 ソ連軍進攻と日本軍』 国書刊行会、1990年。

関連項目

* 大日本帝国陸軍師団一覧

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