第17回社会人野球日本選手権大会

1990年（平成2年）秋、社会人野球の頂点を競う第17回社会人野球日本選手権大会が、10月10日から10月18日までの9日間にわたり開催されました。この年の大会は、兵庫県神戸市のグリーンスタジアム神戸（現在のほっともっとフィールド神戸）を舞台に初めて開催され、以降1996年の第25回大会まで、この球場が選手権大会の主会場となりました。従来の大阪球場から場所を移したことは、大会の歴史における大きな転換点の一つと言えます。

また、今大会では地区割りの重要な変更が行われました。それまでの中部地区と東海北陸地区が再編され、新たに北信越地区と東海地区が誕生。現在の社会人野球の主要な地区割りの基礎がこの時に築かれました。さらに、出場チーム数がこれまでの24チームから26チームに拡大され、より多くのチームに全国大会への道が開かれました。この回に初めて選手権大会に出場したのはNTT関西の1チームのみでした。特筆すべき制度として、今大会に限ってJABA関東選抜リーグの優勝チームに本大会への推薦出場権が与えられ、富士重工業（現在のSUBARU）がその権利を得て出場を果たしました。

大会は、それまでの打撃戦が中心となりがちだった傾向とは異なり、投手の力投が際立つ展開となりました。特に、地元関西からの出場となった日本生命のエース、新谷博投手（後に西武ライオンズなどで活躍）が圧巻のパフォーマンスを披露。21イニング連続無失点という驚異的な記録を樹立するなど、強力打線を封じ込める快投を見せ、大会の主役となりました。彼の活躍に牽引された日本生命は快進撃を続け、決勝へと駒を進めました。

10月18日に行われた決勝戦では、日本生命が日本石油（現在のENEOS）と対戦しました。試合は日本生命が優位に進め、結果的に勝利を収めました。日本生命は、この優勝が社会人野球日本選手権大会において初めてのダイヤモンド旗獲得となりました。決勝戦の勝利投手は新谷博、敗戦投手は日本石油の木村投手でした。また、この試合では日本生命の十河選手が本塁打を放っています。

大会終了後には、個々の活躍を称える表彰が行われました。最高殊勲選手賞（MVP）には、その圧倒的な投球でチームを初優勝に導いた日本生命の新谷博投手が選出されました。敢闘賞は、決勝で敗れたものの活躍を見せた日本石油の五十嵐章人外野手に贈られました。打撃面では、優勝チームである日本生命の十河章浩内野手が打撃賞を受賞。また、最も高い打率を記録した首位打者賞には、11打数6安打で打率.545を記録した東芝の松原和也外野手が輝きました。

さらに、ポジションごとに優れた活躍を見せた選手たちが大会優秀選手として選ばれました。選出された選手は以下の通りです。

投手: 新谷博（日本生命）、木村恵二（日本生命）、鈴木健（日本石油）
捕手: 高見泰範（東芝）、岡隆博（日本生命）
一塁手: 佐藤清（日本生命）、丹波健二（東芝）
二塁手: 大島公一（日本生命）、尾上裕介（河合楽器）
三塁手: 若林重喜（日本石油）
遊撃手: 十河章浩（日本生命）、伊藤義樹（日本石油）
外野手: 五十嵐章人（日本石油）、鶴岡昌宏（日産自動車）、松原和也（東芝）
指名打者: 熊添英樹（日本生命）、久慈照嘉（日本石油）

今大会では、複数の部門で大会タイ記録が生まれました。NTT東北が1回戦の四国銀行戦で2回に1イニング連続安打のタイ記録となる7安打を放ちました。また、NTT北海道は1回戦の住友金属戦で1試合チーム最多二塁打のタイ記録となる7本を記録しました。日本生命も準決勝の河合楽器戦で1イニングチーム最多三塁打のタイ記録となる2本を記録。大昭和製紙北海道は1回戦のNTT関西戦で1イニングチーム最多犠打のタイ記録となる3犠打を記録しました。投球面では、MVPにも輝いた日本生命の新谷博投手が、2回戦のNTT東北戦で1試合最多奪三振（14）、連続奪三振（6）、そして毎回奪三振という、三つのタイ記録を同時に達成するなど、記録的な大会となりました。

第17回大会は、開催地の変更や地区割りの再編など、大会の枠組みが大きく変化した節目の大会であり、新谷博という記憶に残る名投手の活躍と、日本生命の初優勝というドラマが生まれた、歴史に残る大会と言えるでしょう。

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