第19期本因坊戦

第19期本因坊戦：坂田栄寿の防衛と高川格の挑戦

1963年に挑戦者決定リーグ戦が開始され、1964年4月から、本因坊栄寿（坂田栄男）に前期に続いて高川格九段が挑戦する七番勝負が行われました。結果は坂田本因坊が4連勝で高川九段を退け、本因坊位を4連覇する結果となりました。

対局方式

参加棋士: 日本棋院・関西棋院の棋士初段以上
予選: 日本棋院、関西棋院でそれぞれ1次、2次予選を行い、合同の3次予選で4名のリーグ参加者を決定
挑戦者決定リーグ戦: 前期シード者と新規参加者4名を加えた8名で実施
コミ: 4目半
持ち時間: 2次・3次予選は各6時間、リーグ戦は各9時間、挑戦手合は各10時間

予選と挑戦者決定リーグ

予選トーナメントの結果、島村俊宏九段、岩田達明八段（日本棋院中部総本部）、半田道玄九段、山部俊郎九段がリーグ戦への参加を決めました。

挑戦者決定リーグ戦は、前期シードの高川格、木谷實、橋本宇太郎、梶原武雄と、上記4名の新規参加者を加えた8名で行われ、1962年11月2日から翌年3月11日まで熱戦が繰り広げられました。前年に名人・本因坊となり、第1期プロ十傑戦でも優勝した坂田に対し、高川は「まだ白旗をかかげるつもりはない」と意気込みを語っていましたが、リーグ戦では高川が第6戦まで全勝し、最終戦を待たずに挑戦権を獲得しました。

挑戦手合七番勝負

坂田本因坊に高川が2年連続で挑む七番勝負は、1964年4月に開幕しました。坂田は、七番勝負開始前のプロ十傑戦優勝までの期間に23連勝を記録していました。

第1局: 箱根石葉亭。中盤は高川が優勢に見えましたが、坂田が細碁に持ち込み、白番1目半勝ち。
第2局: 松江市宍道湖畔の皆美館。坂田が連勝。
第3局: 長崎市諏訪荘。坂田が巧妙なシノギで中押し勝ち。
* 第4局: 蒲郡市ふきぬき。坂田が中押し勝ち。

坂田が4連勝で本因坊位を防衛し、4連覇を達成。この勝利で坂田の連勝記録は27、タイトル戦連勝記録は12に伸びました。山部俊郎九段は「坂田は遠くなりにけり」と嘆き、近藤日出造は新聞漫画で「バチあたり坂田」と評しました。

対局譜の分析（第3局より）

119手目: 白が上辺を荒らしにいった際、黒1、3と攻めました。白8のハネ、10のツケ、12の裏ツケが巧妙なシノギでした。黒11で10の上にハネ出すと、白は18の3の切りからハイ込み、黒押さえに白16があります。12にも黒13ぐらいしかなく、白18までシノギ、白22、24で全局的にさばいた形となりました。

第1局の分析

白10と狭くヒラいたのは、将来20にカカることを想定した坂田の工夫でした。プロ十傑戦でも試みており、右上に三々に入った実戦図では格好の位置となっています。白42では34の下にノビる手もありましたが、黒43と切った石を取られては黒が好調です。白60までのコウとなり、白66のコウ立てに黒67と解消したのは、58の下に切って解消するのがまさっていました。白72、74の攻めが好調で、黒73とサバキを図りますが、白78とカラミ攻めになり、白90で下辺の黒の一団は絶望となりました。坂田ペースの戦いで、白100まで大きく取り込んで有望な形勢でした。

黒103に対して中央白を補強すると、下辺黒への利きによって2の7などの手で左下の白が危ないと見て白104と守りましたが、この白を取るのは無理で、珍しく坂田が読み負けました。黒105から右辺の白を取り込んで逆転し、黒が優勢となりました。ここから優勢を意識した高川は手堅い打ち方を重ね、特に151では152に這えばはっきりしていましたが、白152で差が詰まってきました。その後も少しずつ後退し、微細ながら最後に白が逆転し、白1目半勝となりました。高川は談話で「この碁を落とすようでは駄目です」と語りました。

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