第1SS装甲師団

第1SS装甲師団ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラー

第1SS装甲師団「ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラー」（LSSAH）は、ナチス・ドイツの武装親衛隊に所属した精鋭部隊です。当初はアドルフ・ヒトラー個人の護衛部隊として発足し、その後の拡大と強化を経て、第二次世界大戦の主要な戦線で重要な役割を担いました。

創設から第二次世界大戦開戦まで

1920年代初頭、ナチ党の初期において、ヒトラーの身辺警護を担う忠実な部隊の必要性が認識されました。エルンスト・レームが率いる突撃隊（SA）がその役割を担う一方で、ヒトラーは自身の護衛部隊を別途編成することを決意します。

1923年、わずか8名の精鋭からなる「シュタプスヴァッヘ」（幹部護衛隊）が誕生し、これがLSSAHの起源となります。その後、「シュトーストルップ・アドルフ・ヒトラー」（アドルフ・ヒトラー特攻隊）と改称され、ミュンヘン一揆に参加しましたが、失敗に終わり、部隊は一時解散されました。

1924年、ヒトラーの釈放後、新たな護衛部隊「シュタプスヴァッヘ」が再編されました。1925年には「シュッツシュタフェル」（SS）と改称され、組織は拡大を続けました。

1933年、ナチ党が政権を掌握すると、SSは急速に規模を拡大し、ヒトラーの個人護衛部隊は「SS＝シュタプスヴァッヘ・ベルリン」として再編されました。その後、「SS＝ゾンダーコマンド・ベルリン」と改称され、ベルリン郊外の兵舎を拠点としました。さらに、SSの訓練部隊としての役割も担うようになり、「SS＝ゾンダーコマンド・ツォッセン」と「SS＝ゾンダーコマンド・ユターボク」が編成され、これらは後に統合され「SS＝シュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー」となりました。

1933年11月、ミュンヘン一揆10周年記念式典で、部隊は「ライプシュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー」の名称を授与されました。1934年、親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーの命令により、部隊名にSSが追加され、「ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラー」（LSSAH）となりました。

第二次世界大戦での活躍

1934年6月、「長いナイフの夜」事件において、LSSAHは突撃隊幹部の粛清を実行する役割を担い、その武力を誇示しました。その後、LSSAHは連隊規模に拡大され、自動車化部隊としての編成が強化されました。LSSAHは、ナチズムのアーリア民族至上主義を反映し、厳格な選考を経て強固な党員でありアーリア系の血統を持つ者のみが配属されました。

1930年代後半には、LSSAHはニュルンベルク党大会や総統官邸での儀仗任務の他、ザールラント併合、オーストリア併合、ズデーテン地方進駐にも参加しました。

1939年、LSSAHは歩兵連隊として再編されました。ポーランド侵攻作戦では、南方軍集団に所属し、ドイツ軍の側面を攻撃するポーランド騎兵部隊との激しい戦闘に参加し、その戦闘能力を証明しました。

フランス侵攻作戦では、オランダ侵攻の先鋒としてアイセル川に架かる橋の占拠に成功し、その後のフランス侵攻でも重要な役割を果たしました。しかし、ウォルムハウトの虐殺事件では、捕虜となったイギリス兵を多数殺害し、その残虐性を露呈しました。

1941年、バルカン半島侵攻作戦では、ギリシアにおける激戦を制圧し、その名を轟かせました。

独ソ戦では、ソ連領内深く進撃しましたが、冬の厳しい寒さとソ連軍の反撃により多大な損害を被りました。1942年には装甲擲弾兵師団へ改編され、ハリコフ攻防戦では、ソ連軍を撃退し、その戦闘能力の高さを再び示しました。

クルスクの戦いでは、ソ連軍の反撃に直面し、激戦を繰り広げました。その後、イタリアへ転戦し、対パルチザン作戦に従事しました。

1943年後半には、完全な装甲師団として再編され、東部戦線に復帰しました。ジトーミル付近での戦闘では、ソ連軍に多大な損害を与えましたが、ソ連軍の攻勢は止まらず、部隊は後退を余儀なくされました。

ノルマンディーから終戦まで

1944年、LSSAHはノルマンディー上陸作戦後、連合軍との激戦に投入されました。グッドウッド作戦では、イギリス軍の攻勢を阻止し、ファレーズ包囲戦では、包囲網からの撤退に成功しました。しかし、その後のアルデンヌ攻勢では、アメリカ軍の抵抗に遭い、大きな損害を被りました。

1945年、「春の目覚め作戦」では、ソ連軍の反撃により敗北を喫し、部隊はオーストリアへ撤退しました。ベルリンの戦いでは、一部の部隊がモーンケ戦闘団に編成され、市街戦で激しく戦いましたが、最終的には降伏しました。残存部隊は、アメリカ軍に降伏し、その歴史に幕を閉じました。

LSSAHの構成

LSSAHは、その変遷の中で様々な部隊編成を経てきました。初期は歩兵部隊としての編成でしたが、徐々に自動車化が進み、最終的には装甲師団として再編されました。また、以下の様な部隊が配属されていました。
戦車連隊
装甲擲弾兵連隊
砲兵連隊
偵察大隊
対戦車猟兵大隊
突撃砲大隊
対空砲大隊
工兵大隊
通信大隊
補給部隊

指揮官

LSSAHの主な指揮官は以下の通りです。

ヨーゼフ・ディートリヒ（1938年 - 1943年）
テオドール・ヴィッシュ（1943年 - 1944年）
ヴィルヘルム・モーンケ（1944年 - 1945年）
オットー・クム（1945年）

戦闘地域

LSSAHは、ポーランド、フランス、ギリシャ、ソビエト連邦、イタリア、ベルギー、オーストリアなど、ヨーロッパの広範な地域で戦闘に参加しました。

まとめ

第1SS装甲師団ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラーは、ナチス親衛隊のエリート部隊として、その創設から終戦まで、数々の激戦を経験しました。その戦闘能力の高さと残虐な行為は、歴史に深く刻まれています。LSSAHの歴史は、第二次世界大戦におけるナチス・ドイツの暗部を象徴する出来事の一つとして、後世に語り継がれるべき教訓となるでしょう。

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