第2次パーマストン子爵内閣

第2次パーマストン子爵内閣：自由党によるイギリス政権の幕開け

1859年6月から1865年10月まで続いた第2次パーマストン子爵内閣は、イギリスの歴史において重要な転換期を象徴する政権でした。これは、新興勢力である自由党による最初の政権であり、それまでの政界勢力図を大きく塗り替えることになります。

パーマストンとラッセルの確執と和解

パーマストン子爵とジョン・ラッセル卿は、ホイッグ党内における二人の巨頭でありながら、長年にわたる確執で知られていました。特に1851年、ラッセル内閣においてパーマストンが外務大臣を務めていた時期、ラッセルはパーマストンを外相の座から解任しました。この事件を契機に両者の対立は深まり、ホイッグ党内を二分するまでになりました。

しかし、1859年、保守党による少数与党政権への不満が高まる中、状況は変化します。パーマストンとラッセルは、ロンドン郊外での会談を経て和解に合意。この和解は、新たな政党の誕生、そしてイギリス政治の未来を大きく変える転換点となりました。

自由党の結党と保守党政権の崩壊

パーマストンとラッセルの和解は、ホイッグ党、ピール派、急進派の3勢力が結集し自由党を結党するきっかけとなりました。1859年6月6日、ロンドンのティールームで自由党の正式な結党が宣言されます。

自由党は、保守党政権への内閣不信任案を提出。そして6月10日、不信任案は可決され、保守党政権は総辞職に追い込まれました。しかし、新興勢力である自由党には、まだ党首はおろか、明確な組織すら整っていませんでした。

組閣への道：女王と三巨頭の駆け引き

自由党の党首、そして新内閣の首相を決めるため、ヴィクトリア女王はグランヴィル伯爵に組閣の大命を与えました。しかし、グランヴィルはパーマストンとラッセルというホイッグ党の両巨頭から協力を取り付けなければ組閣は不可能だと判断し、その条件を女王に提示します。

パーマストンはグランヴィルの要請を受け入れましたが、ラッセルはかつての部下であるグランヴィルの下に就くことを拒否しました。そのためグランヴィルは組閣を断念せざるを得なくなり、女王はラッセルの拒否に激怒。最終的に、女王はパーマストンに組閣の大命を与えたのです。

パーマストン首相と6年を超える政権

1859年6月12日、パーマストンは2度目の首相に就任しました。以降、1865年10月18日に首相在職中に死去するまで、6年以上にわたってイギリスの政権を担うことになります。彼の長期政権は、自由党の確立とイギリス政治における新たな時代の幕開けを告げるものとなりました。第2次パーマストン子爵内閣は、自由党という新たな勢力の台頭を背景に、イギリス政治史において重要な意味を持つ政権であったといえるでしょう。

参考文献

* 君塚直隆『パクス・ブリタニカのイギリス外交 パーマストンと会議外交の時代』有斐閣、2006年。

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