第200爆撃航空団 (ドイツ空軍)

第200爆撃航空団（KG 200）：ドイツ空軍の謎多き精鋭部隊

第200爆撃航空団（Kampfgeschwader 200、KG 200）は、第二次世界大戦下のドイツ空軍において、その存在すら秘匿された特殊部隊でした。通常の爆撃任務とは一線を画し、長距離偵察、新型機の試験飛行、そして鹵獲した敵機を用いた秘密裏の作戦活動が主な任務でした。その活動は、連合国軍に知られることなく、終戦まで続けられました。

歴史：影の部隊の形成

KG 200の起源は、1934年に遡ります。ドイツ空軍はポーランド上空での空中偵察任務を成功させたテオドール・ロヴェル大佐の功績に着目し、アプヴェーア（ドイツ国防軍の情報組織）傘下の特殊飛行隊を編成しました。しかし、戦争が激化するにつれてアプヴェーアへの信頼が低下すると、新たな偵察部隊として「第2テスト編成」が1942年にヴェルナー・バウムバッハの指揮下で創設されました。そして、1944年2月20日、「第1テスト編成」と合併し、KG 200が正式に発足しました。1944年11月11日、バウムバッハが飛行団長に就任し、KG 200は全ての特殊飛行任務を一手に担うことになります。

組織：秘密裏に展開する精鋭部隊

KG 200は、通常のドイツ空軍の飛行団とは異なり、わずかに2個の作戦飛行隊（Gruppen）で構成されていました。その他の飛行隊の編成計画もありましたが、終戦までに実働部隊となることはありませんでした。各飛行隊はヨーロッパ各地に点在する秘密基地を拠点とし、極秘裏に活動を展開しました。

KG 200／第I飛行隊: 主にハインケル He 115を使用し、敵占領地域へのアプヴェーアの工作員投下任務を担いました。特に1944年7月には、260名もの工作員をパラシュート降下させました。これは親衛隊保安部の直接指揮の下で行われた大規模な作戦でした。この飛行隊は3個の中隊（Staffeln）で構成され、第1中隊は長距離作戦、第2中隊は近距離作戦、そしてフィンランドに駐屯する第3中隊は海軍パイロットによって運用されていました。

KG 200／第II飛行隊: 電子戦、長距離偵察、日本占領下の中国への物資輸送など、多岐にわたる任務を担いました。特殊コマンド部隊である第3飛行中隊を擁していましたが、1944年9月には第1降下猟兵軍の指揮下に移管されています。

KG 200／第III飛行隊: 魚雷装備のフォッケウルフ Fw 190の配備が計画されましたが、発足には至りませんでした。

KG 200／第IV飛行隊: ユンカース Ju 90、Ju 290、そして計画段階にあったJu 390やメッサーシュミット Me 264を用いた長距離飛行の訓練と運用を担っていました。アメリカ本土への偵察や工作員・爆弾の輸送なども計画されていました。

第5飛行中隊（レオニダス飛行中隊）: テスト飛行、飛行爆弾、ロケットを用いた、文字通り「自爆攻撃」に近い危険な任務を担うために編成された部隊です。古代ギリシャのスパルタ王レオニダス1世にちなんで名付けられました。

任務：多様な作戦活動

KG 200は、その特殊性ゆえに、非常に多様な任務を遂行しました。

長距離偵察: 戦争開始前は民間機が、戦争中は主にユンカース Ju 86や飛行艇が使用されましたが、航続距離の不足から鹵獲したB-17やB-24、Tu-2も使用されました。これらは偵察だけでなく、ドイツ軍への補給や要人の輸送にも用いられました。

ミステル計画: 老朽化したJu 88に巨大な成形炸薬弾を搭載し、誘導戦闘機によって目標に突入させる無人爆撃機システムです。ノルマンディ上陸作戦後には連合軍侵攻阻止策として使用されましたが、効果は限定的でした。

自殺的任務: 連合軍爆撃機を迎撃するための「ゼルブストプファー（自己犠牲）」作戦では、V1パルスジェット巡航ミサイルを有人化したフィーゼラー Fi 103Rを用いる計画がありましたが、貴重なパイロットの損失を懸念したバウムバッハによって中止されました。「アクティオン24」作戦では、ヴィスワ川に爆薬を搭載したDo 24を着水させ、橋梁を爆破する計画がありましたが、実行されることはありませんでした。

* 特殊任務: 敵地への工作員投下、レーダー妨害、日本への長距離輸送、秘密の爆撃任務、鹵獲機を用いた敵軍編隊への潜入など、極秘裏に行われたとされる様々な作戦が伝えられています。しかし、これらの作戦に関する情報は断片的で、信憑性については議論の余地があります。

結語：謎に包まれた精鋭部隊

KG 200は、その特殊な任務と徹底した秘匿性から、未だ謎の多い部隊です。残された資料は断片的で、その全貌は明らかにはなっていません。しかし、彼らの活動は、第二次世界大戦におけるドイツ空軍の戦略の一端を示唆するものであり、歴史研究において重要な意味を持っています。KG 200の活動は、戦争の残酷さと、極限状況下における人間の行動を改めて考えさせる、興味深く、そして重く、複雑な物語です。

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