第22太陽周期

第22太陽周期：太陽活動と地球への影響

1755年の観測開始以来22回目の太陽活動周期である第22太陽周期(1986年9月～1996年5月)は、9.7年間続きました。この期間の太陽黒点数は、最大158.5個(1989年7月)に達し、観測史上3番目の多さを記録しました。一方、黒点数がゼロの日数は309日もありました。この周期は、活発な活動と静穏な時期が混在する、変化に富んだものでした。

1989年の大規模磁気嵐：未曽有の事態

第22太陽周期において最も注目すべき出来事は、1989年に発生した2度の大きな磁気嵐です。

1989年3月：ケベック州大停電

3月9日のコロナ質量放出を起源とする磁気嵐は、3月13日未明に地球を襲いました。その規模は非常に大きく、極地方では強いオーロラが観測され、通常では見られないほど南の地域でもオーロラが確認されました。

この磁気嵐は、カナダのケベック州で広範囲の停電を引き起こしました。ケベック州の送電網は、カナダ楯状地という地質構造上の特徴から地中に電流が流れにくく、また送電線が長距離に渡っていることから、地磁気変動によって誘導された電流が735 kVの高電圧送電線に集中し、送電網の遮断器の誤作動を招いたのです。この大規模停電は、ケベック州全域に深刻な影響を与えました。

さらに、この磁気嵐は、数多くの人工衛星にも影響を及ぼしました。一部の衛星は数時間にわたって制御不能となり、GOES気象衛星との通信が途絶え、気象画像の取得ができなくなりました。NASAのTDRS-1通信衛星では、電子回路への粒子流入による250件以上の異常が記録されました。また、スペースシャトル・ディスカバリーの燃料電池にも異常が検出されました。当時、冷戦下にあったことから、核兵器実験によるものとの誤解や、ちょうど打ち上げられたスペースシャトルSTS-29との関連付けなど、様々な憶測が飛び交いました。短波放送にも障害が発生し、ソ連政府による妨害との誤解も生じました。

1989年8月：金融市場への影響

8月にも発生した磁気嵐は、8月16日の大規模な[太陽フレア]が原因でした。3月のフレア(X15)を上回る規模で、集積回路に影響を与え、トロントの株式市場の取引量を半減させる事態となりました。

太陽活動の監視：現代社会の課題

これらの出来事をきっかけに、太陽活動の監視の重要性が改めて認識されました。1995年以降は、NASAとESAの共同ミッションであるSOHO衛星によって太陽活動が継続的に観測されており、地球への影響を予測し、軽減するための取り組みが進められています。太陽活動は、現代社会のインフラや経済活動に大きな影響を与える可能性があることを示す、重要な事例となりました。第22太陽周期は、そのことを私たちに強く印象づけたのです。

まとめ

第22太陽周期は、太陽黒点数の変動や、大規模な磁気嵐とその地球への影響を通して、太陽活動のダイナミズムと、現代社会におけるその重要性を示す貴重な事例です。1989年の磁気嵐は、社会インフラへの影響や、国際情勢における誤解を生むなど、多角的な視点から太陽活動の把握と対策の必要性を浮き彫りにしました。将来的な太陽活動の予測と、地球への影響の軽減に向けた研究開発の継続が、ますます重要となっています。

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