第47回先進国首脳会議

2021年6月11日から13日にかけ、英国南西部のコーンウォールで第47回G7サミットが開かれました。イギリスが主催国を務めたこの会議には、G7に加盟する7カ国の首脳に加え、欧州連合（EU）の代表が出席しました。

欧州連合は、1981年以降、欧州委員会委員長がすべての会議と意思決定プロセスに参加しており、2010年のムスコカ・サミット（当時はG8）以降は欧州理事会議長も共同代表として名を連ねています。

かつて主要8カ国（G8）体制だった枠組みは、2014年3月にロシアとの有意義な対話が困難であるとのG7側の認識に基づき、ロシアを除いたG7形式での開催が定着しています。2020年にはアメリカとフランスの間でロシアの招待について一時的な報道がありましたが、イギリスとカナダが反対姿勢を示し、最終的にこの年のサミットは新型コロナウイルスのパンデミックにより中止されました。2020年には、代わりにオンライン形式での臨時会合が2度実施されています。

主催国である英国のボリス・ジョンソン首相は、今回のサミットにインド、韓国、南アフリカ共和国、オーストラリアの首脳を招待しました。これは、世界の主要経済国であるG7の枠組みを発展させ、「D10」と呼ばれる世界の主要10民主主義国によるフォーラムを創設するというジョンソン首相の構想と関連付けられています。招待を受けた国々のうち、オーストラリアと韓国は公式招待を歓迎し、インドもサミット参加を表明しました。特に韓国大統領の参加は、G7サミットとして初めての事例となりました。

多くの首脳にとって初めての対面サミット参加となりました。イタリアのマリオ・ドラギ首相、日本の菅義偉総理大臣、アメリカのジョー・バイデン大統領は、それぞれ就任後初のG7サミット出席です。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とシャルル・ミシェル欧州理事会議長も、対面でのサミット参加は初めてでした。一方、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、2021年9月の連邦選挙に出馬せず政界引退を表明していたため、このサミットが最後の参加となりました。サミット初日の会談終了後には、エリザベス女王がエデン・プロジェクトで各国首脳と懇談する機会もありました。

招待国首脳の他、アントニオ・グテーレス国連事務総長も出席しました。ただし、インドのナレンドラ・モディ首相は、自国のコロナ禍の状況を考慮し、リモートでの参加となりました。

主要議題と成果

今回のサミットでは、新型コロナウイルスのパンデミック対応と気候変動対策が主要な議題となりました。ジョンソン首相は、世界へのワクチン公平配布や将来のパンデミック予防に向けた国際協調を呼びかけ、「カービスベイ保健宣言」として採択された合意に基づき、G7諸国は合計10億回分のワクチンを他国に提供することで合意しました。世界保健機関（WHO）事務局長は、G7の取り組みを評価しつつも、世界的な接種にはさらに多くのワクチンが必要であると指摘しました。

11月に開催されるCOP26を見据え、気候変動対策も焦点となりました。G7諸国は、2050年までのカーボンニュートラル実現を誓約。国境炭素税やグリーンファイナンス、石炭火力の段階的廃止、貧困国の気候変動対策支援などが議論されました。

経済政策における国際協調も重要なトピックでした。多国籍企業の法人税改革として、タックス・ヘイブンを利用した租税回避を防ぐため、国際的な最低法人税率を15%とすることでG7財務大臣会合で合意がなされました。また、国際通貨基金（IMF）による特別引出権（SDR）の割り当て計画についても再検討が進められました。

かねてより覇権主義的な動きが見られる中国への対応も主要な議題でした。アメリカと日本は「自由で開かれたインド太平洋」構想に基づき、「台湾」を首脳声明に明記することを強く求めました。当初、一部の欧州国から中国への過度な刺激を避けるべきとの声も上がりましたが、アメリカと日本の働きかけにより、最終的にG7として台湾海峡の平和と安定の重要性が首脳声明に盛り込まれました。声明では、中国だけでなく、ロシア、北朝鮮、ミャンマーの専制主義的な動きについても言及され、北朝鮮には非核化、ミャンマーにはクーデターの非難が盛り込まれました。

その他の首脳声明の内容として、気候変動対策における2030年までの二酸化炭素排出量削減目標（2010年比半減）の確認、開発途上国への気候変動対策資金援助の増額、中国の「一帯一路」を念頭に置いたインフラ投資促進、レアアース供給網強化、サイバー攻撃対策などが含まれました。また、日本の東京オリンピック・パラリンピック開催に対するG7の支持が表明され、開発途上国における石炭火力発電への新規支援を2021年末までに終了することも明記されました。

中国からの反応

G7の対中姿勢に対して、中国側は強く反発しました。在英国中国大使館報道官は、香港や新疆ウイグル自治区に関するG7の言及を「内政干渉」として非難し、「グローバルな決定が少数の国によって左右される時代は終わった」と主張。「偽物の多国間主義」としてG7を牽制しました。

また、中国国内のSNSでは、G7を風刺する画像が出回りました。有名な『最後の晩餐』をモチーフにした「最後のG7」と題された風刺画や、義和団の乱当時の八カ国連合軍兵士にG7外相を置き換えた風刺画などが制作・拡散されました。

その他の側面

サミット開催中の警備は厳重に行われ、7000万ポンドもの費用がかかったと推定されています。外部からの情報漏洩を防ぐため、会場ホテルでは通信が遮断されたとも報じられました。会場沖合にはイギリス海軍の艦艇が展開し、万全の態勢が取られました。

サミット閉幕後、開催地であるコーンウォール州で新型コロナウイルスの感染者数が急増しました。地元自治体や一部の専門家はサミット開催との関連を示唆しましたが、イギリス政府は観光客の増加や若年層での流行が原因であるとして、直接的な関連性を否定しました。

また、サミット終了後の2021年8月には、アフガニスタン情勢の緊迫化を受け、G7はオンライン形式での外務大臣会合と首脳会合を開催しました。タリバンに対し人権尊重や安全確保を求めるとともに、アフガニスタンが再びテロの温床とならないよう国際社会で連携することなどが確認されました。この会合は、米軍のアフガニスタンからの撤退とタリバンの実権掌握という、サミット後に発生した重要な国際情勢に対応するものでした。アメリカの撤退は、対中戦略へのシフトといった長期的な地政学的考慮も背景にあると分析されています。

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