第57師団 (日本軍)

第57師団：知られざる歴史

第57師団は、1940年（昭和15年）から1945年（昭和20年）にかけて存在した大日本帝国陸軍の師団の一つです。主に東北地方北部、具体的には弘前師管で編成されました。兵団文字符は「奥」が用いられました。この師団は、第二次世界大戦の激動期に、満洲から九州へと移動し、終戦を迎えるという特異な歴史を辿りました。

編成と初期の動き

第57師団は、もともと東北地方北部の第8師管を管轄していた第8師団が満洲へ永久駐屯することになったため、その留守部隊から常設師団として新編されました。弘前師管を引き継ぎ、当初は天皇の直属隷下にありましたが、1940年12月には北部軍の隷下に入りました。この編成は、第8師団が外地へ移動する際に生じる管区業務の空白を埋めるため、緊急的に行われたものでした。

満洲への派遣

1941年（昭和16年）、第57師団は関東軍特種演習（関特演）に参加するため満洲へ派遣され、そのまま駐屯することになりました。弘前では、留守第57師団が臨時編成され、管区業務を引き継ぎました。第57師団は当初第3軍に、その後第4軍に編入され、黒河省神武屯に駐屯し、黒竜江沿岸一帯の国境陣地警備と対ソ戦の訓練に従事しました。この期間、師団はソ連との国境を睨み、万が一の事態に備えていました。

本土決戦準備と終戦

第二次世界大戦末期の1945年（昭和20年）には、本土決戦に備えるため、第57師団は九州へ移動しました。第16方面軍戦闘序列に編入され、連合国軍の九州上陸に備えました。しかし、実際には上陸作戦は行われず、同年8月15日に日本が降伏。第57師団は、一度も戦闘を経験することなく、10月5日に復員し解散しました。この師団の歴史は、大戦末期の混乱と、戦火を交えることなく終戦を迎えたという、ある意味で特異な側面を持っています。

師団長と参謀長

歴代の師団長は以下の通りです。

伊藤知剛 中将：1940年8月1日 - 1941年10月15日
楠本実隆 中将：1941年10月15日 - 1943年3月11日
上村幹男 中将：1943年3月11日 - 1945年3月23日
矢野政雄 中将：1945年3月23日 - 終戦

また、参謀長は以下の通りです。

新藤多喜男 中佐：1941年7月22日 - 1942年8月1日
山田英男 大佐：1942年8月1日 - 1943年8月2日
斎藤浩三 大佐：1943年8月2日 - 1945年7月26日
松尾義人 中佐：1945年7月26日 - 終戦

これらの将校たちが、師団の運営と指揮を担いました。

部隊編制

満洲派遣時の編制は、以下の通りでした。部隊名には通称号が併記されています。

第57師団司令部 - 奥第7225部隊
第57歩兵団 - 奥第7226部隊
第57歩兵団司令部 - 奥第7210部隊
歩兵第52連隊 - 奥第7202部隊
歩兵第117連隊 - 奥第7217部隊
歩兵第132連隊 - 奥第7232部隊
捜索第57連隊 - 奥第7215部隊
第57砲兵団 - 奥第7228部隊
第57砲兵司令部 - 奥第7220部隊
野砲兵第57連隊 - 奥第7221部隊
工兵第57連隊 - 奥第7227部隊
第57師団通信隊 - 奥第7230部隊
輜重兵第57連隊 - 奥第7235部隊
第57師団兵器勤務隊 - 奥第7240部隊
第57師団衛生隊 - 奥第7241部隊
第57師団第1野戦病院 - 奥第7243部隊
第57師団第2野戦病院 - 奥第7244部隊
第57師団第3野戦病院 - 奥第7245部隊
第57師団第4野戦病院 - 奥第7246部隊
第57師団病馬廠 - 奥第7249部隊

最終所属部隊と各連隊長は以下の通りです。

歩兵第52連隊（弘前）：河原林克巳大佐
歩兵第117連隊（秋田）：田中全大佐
歩兵第132連隊（秋田）：小林俊一大佐
野砲兵第57連隊：高瀬正二大佐
工兵第57連隊：矢野謙治少佐
輜重兵第57連隊：武居卯一大佐
第57師団通信隊：坂爪力大尉
第57師団兵器勤務隊
第57師団第2野戦病院
第57師団病馬廠

まとめ

第57師団は、その創設から解散まで、一貫して後方支援や警備任務に携わり、直接的な戦闘を経験することはありませんでした。しかし、その存在は、当時の日本の軍事戦略や、第二次世界大戦の推移を理解する上で、重要な役割を果たしています。この師団の歴史は、戦時下の日本の複雑な状況と、それぞれの部隊が直面した異なる運命を物語るものです。

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