第58師団 (日本軍)

第58師団

第58師団は、太平洋戦争中に中国戦線で活動した日本陸軍の師団の一つです。主に占領地の警備と治安維持を目的とした治安師団として編成されました。この師団は、従来の師団とは異なる特徴を持ち、その編成や活動には特筆すべき点が多く見られます。

概要

1942年（昭和17年）2月2日、軍令陸甲第8号により編成が下令され、独立混成第18旅団を改編して誕生しました。前身の独立混成第18旅団は、復員した第106師団隷下の歩兵第136旅団から人員や装備を引き継いでいたため、第58師団の補充業務は熊本師管が担当しました。このため、熊本県出身の兵士が多く所属していました。

編成の特徴

第58師団は、4つの独立歩兵大隊からなる歩兵旅団を2つ持つ編成でした。砲兵連隊を持たない丁師団（丙師団とも呼ばれる）であり、火力支援は他の部隊に依存していました。また、軍旗は連隊に下賜されるため、師団自体は軍旗を持たないという特徴がありました。これは、他の師団とは異なる独特の編成でした。

沿革

編成と初期の活動

師団は、1942年（昭和17年）2月2日に漢口で編成された後、同月27日に第11軍戦闘序列に編入され、司令部を応城に置きました。前身の独立混成第18旅団の任務を引き継ぎ、応城付近の警備と治安維持に従事しました。

大陸打通作戦への参加

1944年（昭和19年）5月からは、大陸打通作戦の第二段である湘桂作戦に参加しました。同年6月18日には湖南省長沙を攻略し、その後も衡陽攻略作戦や桂林作戦など、主要な作戦で中心的な役割を果たしました。特に、11月10日には桂林城内に突入し、激戦の末に占領に成功しました。

大陸打通後の活動

作戦終了後は、第11軍司令部が置かれた柳州の北東側の桂林方面の警備を担当しました。南側の南寧方面は第3師団、西側の宜山方面は第13師団が担当していました。大陸打通作戦の達成後、一部の師団が仏印方面へ移動する中で、第58師団は引き続きこの地域に留まりました。

終戦に向けて

1945年（昭和20年）4月1日に連合国軍が沖縄に上陸するなど、戦局が大きく変化する中で、広西省方面の日本軍は撤退を開始しました。第3師団と第13師団は支那派遣軍直轄師団となり、南京方面への撤退を支援するしんがり部隊として中国軍と交戦し、多くの犠牲者を出しました。第58師団隷下の独立歩兵第94大隊は、一時的に南寧を確保しましたが、その後撤退し、賓陽まで戻りました。また、第13師団司令部が撤退する際、そのしんがりを務めた歩兵第65連隊は、柳城の警備を担当しました。

終戦直前

7月4日、第58師団隷下の独立歩兵第106大隊は全軍のしんがりとなり、警備地の鹿寨から撤退しました。その後、第58師団の各隊は追撃を振り切りながら撤退を続け、8月16日には白沙舗と全県の中間地点で独立歩兵第106大隊が中国軍と交戦し、これを撃退しました。これが中国戦線における最後の戦闘となりました。

師団概要

編制

第58師団の編制は、以下の通りです。

師団全体: 人員11,627人、馬匹1,023頭、車両92両
師団司令部: 59人、17頭、19両
歩兵旅団×2: 各5,102人、346頭、4両
旅団司令部: 114人、18頭、4両
独立歩兵大隊×4: 各1,247人、82頭
大隊本部: 30人、4頭
歩兵中隊×5: 各195人、0頭
機関銃中隊: 132人、50頭
歩兵砲中隊: 130人、60頭、山砲2門、歩兵砲2門
工兵隊: 175人、6頭
通信隊: 324人、44頭
輜重隊: 472人、208頭、55両
野戦病院: 349人、45頭、10両
病馬廠: 44人、11頭

歴代師団長

下野一霍 中将：1942年（昭和17年）2月3日 - 1944年3月1日
毛利末広 中将：1944年（昭和19年）3月1日 - 1945年3月9日
川俣雄人 中将：1945年（昭和20年）3月9日 - 終戦

参謀長

角和善助 大佐：1942年（昭和17年）2月3日 - 1943年8月2日
有馬純雄 大佐：1943年（昭和18年）8月2日 - 1944年12月21日
高原篤重 大佐：1944年（昭和19年）12月21日 - 終戦

最終所属部隊

歩兵第51旅団: 白浜重任少将
独立歩兵第92大隊: 松元実大尉
独立歩兵第93大隊: 平田友市少佐
独立歩兵第94大隊: 小林正道大尉
独立歩兵第95大隊: 稲垣陽大佐
歩兵第52旅団: 永田文雄少将
独立歩兵第96大隊: 立川惣四郎大尉
独立歩兵第106大隊: 河野一馬大尉
独立歩兵第107大隊: 築島長作少佐
独立歩兵第108大隊: 山田善之輔大尉
第58師団工兵隊: 鈴木孝夫大尉
第58師団輜重隊: 和田喜代治少佐
第58師団通信隊: 狩谷伝次郎少佐
第58師団野戦病院: 魚住清軍医少佐
第58師団野戦病院外科診療主任第2班長: 米満政吉軍医少佐
第58師団病馬廠: 前田甚蔵獣医大尉

参考文献

外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹 編著『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。ISBN 4829502738。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

関連項目

* 大日本帝国陸軍師団一覧

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