等角図

等角図（とうかくず）とは

等角図（isometric drawing）または等角投影図（isometric projection）とは、投影図の一種であり、物体を斜め上から見下ろしたような視点で描画する手法です。この図法では、直交する3つの軸がそれぞれ120度の角度をなしており、物体を均等な縮尺で表現できます。製図においては、各辺を実寸で描けるため、寸法を正確に伝えやすいという大きな利点があります。しかし、奥行きが考慮されないため、奥にあるものが実際よりも大きく描画されてしまうという特徴も持ち合わせています。

歴史

等角図の概念自体は、2千年紀中期頃から経験的に存在していましたが、1822年に化学者のウィリアム・ファリッシュによって初めて定式化されました。この定式化により、等角図は科学技術分野で広く用いられるようになりました。

オランダの研究機関であるInternational Institute for Asian StudiesのJan Krikkeは、「等長写像は19世紀半ばから技術者にとって不可欠なツールとなり、その後間もなく欧米で建築訓練のカリキュラムに組み込まれた」と述べています。また、彼は「軸測投影図（等角図を含む図法グループの総称）の起源は中国にあり、中国美術の機能は欧州美術の透視投影と類似していた」という興味深い見解も示しています。

応用

トリックアート

等角図は奥行きが正確に表現されないという特性を逆手に取り、視覚的な錯覚を利用したトリックアートの制作にも活用されています。実際には存在しない、あるいは三次元空間では構築不可能な「不可能図形」などが、この手法を用いて数多く生み出されています。これらの作品は、私たちの視覚認識の限界を問い、驚きと楽しさを与えてくれます。

コンピュータゲーム

1980年代から1990年代にかけてのコンピュータゲームでは、等角図に似た斜め見下ろし視点の「クォータービュー」という表現がよく見られました。これは、当時の技術的な制約から3D表現が困難であったため、限られたリソースの中で擬似的な3D効果を作り出すための手法として採用されたものです。この視点は、ゲームの世界に奥行きと立体感を加え、より没入感のあるゲーム体験を提供しました。

クォータービューを初めて採用したゲームは、1982年にセガが発売したアーケードゲーム『ザクソン』です。その後、1990年代には、『ディアブロ』、『バルダーズ・ゲート』、『スタークラフト』、『X-COM: UFO Defense』などのPC向けRPGやストラテジーゲームで広く採用されました。2000年代に入り、グラフィック表現力が向上するにつれてクォータービューを採用したゲームは減少しましたが、2010年代以降は、一部のインディーゲームで再び採用されるようになっています。

このように、等角図は製図からアート、そしてゲームまで、幅広い分野で活用されている図法です。その特性を理解することで、より深くその面白さを感じることができるでしょう。

参考資料

日本大辞典刊行会, ed. (1974). "とうかくとうえいず【等角投影図】". 大日本国語辞典. Vol. 14 (初版初刷 ed.). 東京: 小学館. p. 425. ISBN 4095220147. NCID BN01221521.

外部リンク

等角投影図 - コトバンク

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