筮竹

筮竹（ぜいちく）とは

筮竹とは、古代中国を発祥とする易占（えきせん）において使用される、竹製の道具です。通常50本の竹ひごで構成され、長さは約35cmから55cm程度。使用時に扇形に開きやすいよう、手元部分がやや細く削られているものもあります。筮竹は算木と並び、易者の象徴として広く知られています。竹製に限らず、同様の用途で使用されるものを総称して「筮（めどき）」と呼びます。

筮竹の歴史

『繋辞伝（けいじでん）』には、「蓍（めどぎ）の徳は円にして神、卦（け）の徳は方にして以て知る」という記述があり、古くはキク科の多年草であるノコギリソウ（蓍）の茎が用いられていたことがわかります。ただし、『繋辞伝』は蓍という植物自体を神秘的に捉えているのではなく、周易の基本となる数に重きを置いています。そのため、筮の材質は必ずしも蓍である必要はありません。ちなみに、蓍の精油は西洋で媚薬として用いられていた歴史がありますが、易の神秘と西洋魔術を混同すべきではありません。その他、メドハギなども筮の材料として使用されたと言われています。

筮竹の数は、大衍（たいえん）の数である50本とされています。しかし、実際に占いを行う際には、1本を太極（宇宙の根源）の象徴として扱い、残りの49本を使用します。大衍の数の由来には諸説ありますが、天数25と地数30の和から、天地に共通する五行の数5を引いたものとする鄭玄（じょうげん）の説が有力です。

筮竹の使用法

筮竹を用いた占いの手順は、以下の通りです。

1. 50本の筮竹の中から1本を取り除き、筮筒に立てるか、横に置きます。この1本は太極を表し、宇宙からの回答を受信するアンテナのような役割を持つと解釈する人もいます。
2. 残りの49本の筮竹を、集中力を高めて左右の手に分けます。左手を天策（てんさく）、右手を地策（ちさく）と呼びます。
3. 地策の中から1本を取り、左手の薬指と小指の間に挟みます。この1本を人策（じんさく）と呼びます。
4. 左右の手に残った筮竹をそれぞれ数本ずつまとめて数え、余りの数を算出します。
5. 最終的に左手に残った筮竹の本数を数え、その結果に基づいて卦を判断します。

卦の判断方法には、本筮法、中筮法、略筮法の3種類があり、それぞれ手順と解釈が異なります。

本筮法（ほんぜいほう）

本筮法は、十八変の筮法とも呼ばれ、『周易』繋辞上伝の記述を基に、南宋の朱熹（しゅき）が復元したものです（『周易本義』筮儀）。最も古い方法ですが、非常に時間がかかり、集中力を維持することが難しいため、現代ではあまり用いられません。

中筮法（ちゅうぜいほう）

中筮法では、まず天策の筮竹を8本ずつ数え取っていき、最後に左手に残った筮竹の数によって卦を決定します。この時、陽の卦が出た爻は陽爻、陰の卦が出た爻は陰爻として扱います。ただし、乾（けん）と坤（こん）の場合は、之卦（じけ）を求める際に爻の陰陽を逆転させます。初爻から上爻まで、各爻ごとに同様の手順を6回繰り返し、最終的な卦を得ます。本筮法に比べて簡略化された方法でありながら、之卦を求めることができるのが特徴です。八卦の漢字が書かれた算木を使用すると、より便利に卦を求めることができます。

略筮法（りゃくぜいほう）

略筮法は、三変の筮法とも呼ばれ、江戸時代の新井白蛾（あらいはくが）の著書『易学小筌』によって広まりました。中筮法と同様に、筮竹を8本ずつ数えていきますが、2回の手順で内卦（成卦の下半分）と外卦（上半分）を同時に求めます。最後に、天策の筮竹を6本ずつ数え取り、爻位（どの爻が変転するか）を決定します。1本=初爻、2本=二爻、3本=三爻、4本=四爻、5本=五爻、6本=上爻となります。略筮法は簡便ですが、変爻の扱いが本筮法や中筮法とは大きく異なるという問題点があります。本筮法や中筮法では、複数の爻が変転することもあれば、全く変爻がないこともありますが、略筮法では必ず一つの爻が変転します。

筮竹の代替手段

筮竹は特殊な道具であり、使い勝手や携帯性に難があるため、古来より様々な代替手段が考案されてきました。

サイコロ
本のページ番号
時計
擲銭法（硬貨）
算木を投げる

これらの他にも、道具を一切使用しない易占法として、無筮立卦（むぜいりっけ）や時間立卦（梅花心易など）があります。無筮立卦では、その場の状況から小成八卦（しょうせいはっけ）を導き出します。

関連項目

易経
易者

外部リンク

世界大百科事典 第２版『筮竹』 - コトバンク
* ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『卜筮』 - コトバンク

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