箱入り娘 (将棋)

箱入り娘：堅牢さと攻撃性の両立を目指す囲い

箱入り娘は、将棋における囲いのひとつです。居飛車の急戦において、舟囲いからの発展形として用いられます。玉が箱の中に収まっているような形状から、加藤治郎によって命名されたとされています。

特徴：舟囲いの強化形

舟囲いから5八の金を6八に移動させたのが箱入り娘です。舟囲いよりも堅牢な囲いとなりますが、実戦で頻繁に見られる囲いではありません。その理由としては、他の囲いと比較して決定的な利点が少ないことが挙げられます。

利点：堅牢性の向上と特定局面での有効性

箱入り娘の最大の利点は、舟囲いよりも堅牢な囲いとなる点です。舟囲いの弱点であった6九の金を6八の金で守ることで、攻防のバランスが改善されます。また、対振り飛車戦において、飛車を3筋（7筋）に回して角頭を狙う際に、銀交換後の割り打ちを避けられるという利点も持ちます。 特に、最短の仕掛けを狙う対四間飛車4六銀右戦法において、後手の△3二銀型に対して▲3八飛車と回る変化で現れることがあります。

弱点：玉の窮屈さと駒の働きにくさ

一方で、箱入り娘にはいくつかの弱点も存在します。まず、玉の配置が窮屈であるため、端や玉頭からの攻撃に対しては、右辺への退路が塞がれている点が挙げられます。また、7九の銀が動きにくく、玉をさらに囲わない限り働きの悪い駒となる可能性があります。振り飛車が銀冠や高美濃囲いにまで発展しているような局面では、上部からの攻撃が弱いために、左銀急戦などでは用いられることは少ないです。

戦術的な位置づけ：穴熊や左美濃への移行過程

箱入り娘は、必ずしも独立した囲いとして用いられるわけではありません。相手の様子を見ながら、居飛車穴熊や左美濃へと移行する過程で、一時的にこの形になることもあります。そのため、箱入り娘そのものの評価は、その後の展開や、全体的な戦術の文脈の中で判断されるべきでしょう。

命名の由来：複数の説

箱入り娘という名前の由来は、玉が箱の中に入っているような形をしていることによるという説が一般的です。しかし、「堅そうだが、手がつくと早い」という、通常の「箱入り娘」の意味合いをかけた俗説も存在します。また、『将棋世界』1947年2月号、3月号での「駒組名称募集」の読書投票で名前が決まったという記述もあります。

まとめ：状況依存の囲い

箱入り娘は、舟囲いを強化した囲いですが、他の発展形と比較すると堅牢性に劣るという欠点があります。しかし、特定の局面では有効な手段となりうるため、将棋の戦術の多様性を示す一つの例と言えるでしょう。その評価は、全体の戦術や局面、そして相手の対応によって大きく変わる、状況依存性の高い囲いであると言えます。

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