4六銀右戦法

4六銀右戦法：居飛車急戦の妙技

4六銀右戦法は、将棋の戦法の一つで、特に四間飛車に対して用いられる居飛車急戦です。その歴史は古く、江戸時代から存在する戦術を現代風にアレンジした戦法と言えるでしょう。近年では、藤井システム対策としても注目を集めています。

塚田泰明八段と4六銀右戦法

1980年代から1990年代にかけて、この戦法を最も得意としたのは塚田泰明八段でした。彼の戦術は、3筋歩の突き捨てから始まる独特の攻めが特徴です。後手の指し方によって変化しますが、基本的な狙いは、後手の陣形を崩し、角頭や玉を攻めることにあります。

例えば、後手が△5二金左とすると、▲3八飛と寄るのが骨子となります。△4三銀に対しては、▲3五歩△同歩▲4六銀と、剛直に後手の角頭を攻めます。その後、▲3八飛に△5四歩とされると、▲6八銀上△1二香▲1六歩△1四歩▲9七角と、端角に構えるのが塚田八段の独特な新手で、振り飛車の陣形を撹乱する効果があります。

また、後手が△5四歩を付かず、△4一飛と角打ちを見せて待機する場合にも、▲3五歩△同歩▲4六銀以外にも、▲3五歩△同歩▲同飛と進めて、加藤流袖飛車のような指し方をする戦術もあります。

△4五歩の角交換は、角交換後に飛車の位置を戻し、玉頭位取りや左美濃に組むのが一般的です。塚田八段は、実戦では両方の囲いを用いていましたが、左美濃の方が手詰まりを起こしやすいと指摘しています。加藤一二三九段も著書『振り飛車破り』で同様の戦型を解説しており、玉頭位取りの展開を示しています。

4六銀右戦法と4六銀左戦法

基本図から、△5二金左ではなく△4三銀とすると、▲4六銀と右銀を進めて▲3五歩を狙う展開になります。これが「4六銀右戦法」と呼ばれる所以です。

後手が△3二金または△3二銀とすると、▲3七桂と上げて、▲1六歩～▲2六飛と組むのが一般的です。▲2六飛-3七桂-4六銀から▲3五歩を狙う指し方は、江戸時代から伝わる古くからある戦術で、5筋位取りや腰掛銀＋右四間飛車などと共に、当時四間飛車対策として有力な指し方でした。『将棋絹篩』にも掲載されています。

△3二飛の場合は、▲3五歩に△5二金なら▲3四歩△同銀▲3八飛と進めます。後手の応手によって様々な変化があり、角交換から玉頭位取りや左美濃に組む展開や、▲5五歩や▲3四歩などを活用した攻めなどが考えられます。

藤井システム対策としての4六銀右戦法

1990年代、対四間飛車の作戦として猛威を振るっていた居飛車穴熊に対して、藤井猛九段は四間飛車から居玉で猛攻を仕掛ける藤井システムを発明しました。この藤井システムは穴熊に対する有効な対策となりました。

4六銀右戦法は、この藤井システムに対抗する手段として注目されるようになりました。居飛車穴熊と指し手が同じであるため、藤井システムの居玉を急戦で咎める狙いがあります。▲3五歩と仕掛け、以下△同歩とさせて▲4六銀と進出するのが基本的な手順です。

しかし、藤井システム側も対策を講じており、9五歩を保留して△6四歩を突くなど、様々な変化に対応する必要があります。4六銀右戦法は藤井システム対策として有効ですが、全ての変化に対応できるわけではないことに注意が必要です。

さまざまな局面と戦術

基本図から様々な変化が生まれます。後手振り飛車側の手段としては、△3二飛、△5四金、△3六歩などがあり、それぞれに先手側の対応策が考えられます。これらの局面では、先手後手それぞれの技術と読みが試されます。

4六銀右戦法は、古くから伝わる戦術と現代的な戦術が融合した、奥深い戦法です。その歴史と発展、そして現代将棋における役割を理解することで、より深く将棋の世界を楽しむことができるでしょう。

もう一度検索