築地町 (刈谷市)

築地町

愛知県刈谷市に属する築地町（ついじちょう）は、市の北部に位置する行政区画です。町域は築地町1丁目から築地町5丁目、および築地町という区画で構成されており、郵便番号は448-0011が割り当てられています。集配業務は刈谷郵便局が担っています。

地理

築地町は、洪積台地の縁辺部に位置しており、町域の北側を逢妻川が流れるという地理的特徴を持っています。行政区画としての1丁目から5丁目のほか、荒田、新田、西縄・向島、矢田山といった通称地名によって区分されることがあります。周辺は他の地域と接しており、西側は新田町、北東側は一ツ木町、南側は青山町、そして南部は恩田町と隣接しています。さらに、町境をなす逢妻川を挟んで泉田町とも向かい合っています。

歴史

築地町の歴史は古く、縄文時代後期に形成されたとされる築地貝塚や、かつて存在した築地古墳と呼ばれる小さな円墳など、古代からの痕跡が残されています。また、逢妻川の入江には、船が寄り着いた神を祀る風習に由来する御船塚の伝承が伝えられています。

村名の由来には説があり、もともとは宮地村と称されていましたが、往古、学者として知られる前右大臣・善相清行がこの地を訪れて熊野神社を創建し、その後、その子孫が村名を「築地」と改めたと伝えられています。

江戸時代の築地村は刈谷藩の領地として栄え、稲作や綿作などの農業が主要な産業でした。村の生産力を示す村高は、時代の変化と共に増加傾向にあり、『寛永高附』には263石余、『元禄郷帳』には322石余、『天保郷帳』には326石余と記録が残されています。この時代、村内は西縄、新田、向嶋、矢田山、クテなど、詳細に分けられた19の字によって構成されていました。

明治時代に入ると行政区画の再編が進みました。1889年（明治22年）の町村制施行により、築地村は隣接する一ツ木村と合併し、新たな一ツ木村の一部となり「大字築地」が設置されました。その後、1906年（明治39年）には、一ツ木村が逢見村、境村、東境村と合併して富士松村が発足し、大字築地はこの富士松村に引き継がれました。明治後期にあたる1910年（明治43年）以降には、逢妻川沿いの低湿地帯であった字西縄や字向島において、土地利用の改善を目的とした床上げ工事が実施されています。

第二次世界大戦後の地方行政改革の中で、1955年（昭和30年）には富士松村が刈谷市に編入合併され、大字築地は刈谷市の一部となりました。合併翌年の1956年（昭和31年）には、世帯数112、人口651という記録があります。そして、1970年（昭和45年）に行われた町名地番整理により、それまでの大字築地が廃止され、現在の「築地町」という町名が正式に誕生しました。

世帯数と人口

築地町の世帯数および人口は、刈谷市北部地域における主要な町の一つです。例えば、2019年（令和元年）6月1日時点の集計では、刈谷市北部の9町の中で、一ツ木町、東境町に次いで3番目に多い世帯数と人口を擁していました。国勢調査のデータからも、過去の人口推移を把握することが可能です。

教育

町内およびその近隣には、地域の教育を担う複数の学校があります。

刈谷市立雁が音中学校: 1982年に開校した中学校で、刈谷市立富士松中学校などの学区を分割して設立されました。刈谷市内の中学校としては敷地面積が最も広く、生徒数も最多の規模を誇ります。
刈谷市立かりがね小学校: 1971年に開校した小学校で、刈谷市立富士松南小学校などの学区分割によって誕生しました。この小学校も、刈谷市内の小学校の中で最も生徒数が多いことで知られています。

築地町にお住まいの児童・生徒は、基本的にこれらの市立小・中学校が学区に指定されています。

交通

町内の公共交通としては、刈谷市が運営する公共施設連絡バスが利用できます。築地町内にはバス停が設置されており、一ツ木線、東境線、西境線の3路線が運行しています。これらの路線は、刈谷市総合運動公園や築地市民館、雁が音中学校、かりがね小学校など、町内外の主要施設を結んで利便性を高めています。より広域な移動手段としては、隣接する一ツ木町に名鉄名古屋本線の一ツ木駅があり、鉄道によるアクセスが可能です。

主な施設・名所旧跡

築地町には、地域の暮らしやレクリエーションを支える様々な施設が立地しています。

刈谷市総合運動公園: かつて築地古墳があったとされる場所に整備された広大な公園です。この公園内には、様々なイベントや競技に利用される多目的アリーナ「ウィングアリーナ刈谷」や、公式競技も開催される陸上競技場「ウェーブスタジアム刈谷」といった主要施設が含まれています。
築地市民館: 1986年に完成した地域の集会・文化活動施設です。
築地排水機場: 1970年に建設された、地域の治水において重要な役割を担う施設です。

また、町内には歴史的な名所旧跡も点在しています。

築地古墳: かつて横穴式石室を持つ小規模な円墳であったと伝えられています。町域内の熊野神社には、この築地古墳から移築されたとされる石室の一部が現存するとされています。
熊野神社: 築地村の村社として崇敬されてきた神社です。築地古墳から発掘された石室が境内に移築されたという伝承があります。
寺院: 曹洞宗の東照寺、同じく曹洞宗の竜泉庵、浄土真宗の誓願寺、浄土宗の神宮寺など、複数の宗派の寺院が町内にあります。

これらの施設や名所旧跡は、築地町の歴史や文化、そして現在の地域生活を知る上で重要な要素となっています。

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