篠原敬介

篠原敬介：映像とオーケストラを彩った作曲家の生涯

篠原敬介（1959年6月12日 - 2011年8月17日）は、東京都杉並区出身の作曲家、編曲家、指揮者、音楽プロデューサーです。映像音楽からオーケストラ作品まで幅広いジャンルで活躍し、その才能は国内外で高く評価されました。

若き日の研鑽と転機

東京音楽大学付属高等学校を経て東京音楽大学に進学し、テューバを田中真輔氏に、作曲を浦田健次郎氏に師事。その後、ラトローブ大学、ビクトリア芸術大学に留学し、作曲をクリーブ・ライスター氏に学びました。留学中に作曲活動を本格的に開始し、1985年に帰国後、三枝成彰音楽事務所に所属。

1988年に独立して篠原音楽事務所を設立。1991年に音楽を担当した『NHKスペシャル・アインシュタインロマン』シリーズで一躍脚光を浴びます。以後、『NHKスペシャル』をはじめ、テレビ、アニメ、映画、舞台など、数多くの作品で音楽を手掛けました。

国際的な活躍と評価

国内のオーケストラはもとより、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団やロンドン交響楽団など、海外のオーケストラとの共演も多数。ウラディーミル・アシュケナージ氏をはじめとする指揮者やソリストからの信頼も厚く、アシュケナージ氏は劇場映画「ピアノの森」の音楽作曲者に篠原氏を指名し、作曲されたテーマ曲「Forest of the piano」やオリジナルサウンドトラックを絶賛しました。

2010年には、自らが選んだ美しい旋律を極上の作曲、編曲、演奏で聞かせるCDシリーズ「GOKUSEN-極旋-」をリリース。エンニオ・モリコーネ氏やフォーレ、ドビュッシー、ラフマニノフ、井上陽水氏、さだまさし氏などの楽曲を、庄司知史氏のオーボエと室内合奏団による演奏で披露し、ジャンルを超えた音楽の魅力を伝えました。

映像音楽への情熱

篠原氏は、NHK放送技術研究所が開発したスーパーハイビジョン22.2chサラウンドに強い関心を示し、愛知万博作品（グローバルハウス）や横浜港開港150周年記念事業「開国博Y150」の映像作品の音楽を、大編成のオーケストラと合唱団を組み合わせるなど、意欲的な作品を発表しました。

早すぎる死と遺されたもの

2011年8月17日、心不全のため急逝。52歳という若さでした。

生前は、パイロットや動物学者を夢見ていた時期もあり、動物行動学に傾倒し、コンラッド・ローレンツの著作を愛読していました。その影響は作品にも現れており、「NHK世界自然遺産を行く」のテーマ曲では、クジラの求愛の声をテーマ曲の冒頭に取り入れ、話題となりました。

動物好きとしても知られ、外出すると多くの野鳥が寄ってくるほどでした。乗馬や競馬を趣味とし、愛犬を大切にする一面も持っていました。また、大の航空マニアであり、絵画の腕前もプロ級という多才な人物でした。

老後はニュージーランドで、ライフワークである音楽制作に励みながら、野生動物に囲まれた生活を送ることを夢見ていました。イギリス文化への造詣も深く、人類学、考古学、民俗学など、幅広い分野に興味を持っていました。

篠原敬介氏の作品は、今も多くの人々に愛され続けています。彼の音楽は、映像と一体となって、観る者の心を揺さぶり、感動を与え、そして、未来へと語り継がれていくでしょう。

主な作品

アインシュタインロマン（NHKスペシャルシリーズ）
世界自然遺産を行く（NHKハイビジョンスペシャルシリーズ）
ピアノの森（劇場用映画）
あらしのよるに（劇場用映画）
開国博Y150 スーパーハイビジョン映像音楽

関連人物

浦田健次郎（作曲家、師事）
ウラディーミル・アシュケナージ（ピアニスト、指揮者）
三枝成彰（作曲家）

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