篠原梵

篠原梵（しのはら ぼん）

篠原梵（1910年4月15日 - 1975年10月17日）は、愛媛県伊予市出身の俳人、編集者、出版者です。本名は敏之（としゆき）。俳号の「梵」は、郷里の松山で男の子を「ボン」と呼ぶことに由来します。

生涯

旧制松山高等学校を経て、1934年に東京大学文学部国文学科を卒業。1938年、中央公論社に入社し、編集者としてのキャリアをスタートさせます。第二次世界大戦中の1944年に中央公論社を退職し、愛媛青年師範学校で教鞭を執ります。

1948年、中央公論社に復職。「中央公論」編集長、出版部長、取締役を歴任し、その後中央公論事業出版専務、社長、丸の内出版社の社長を兼任するなど、出版界で重要な役割を果たしました。出版人としての功績が認められ、毎日出版文化賞、広告電通賞などを受賞しています。

俳句は高校時代に川本臥風の指導を受け始め、大学入学後には臥風の紹介で臼田亜浪に師事しました。大野林火、原田種茅らからも指導を受け、亜浪が主宰する俳誌「石楠」で、実作と評論の両面で才能を発揮します。1939年には、『俳句研究』8月号の座談会「新しい俳句の課題」に石田波郷、加藤楸邨、中村草田男とともに参加。この座談会をきっかけに、他の3人と共に「人間探求派」と呼ばれるようになりました。

第二句集『雨』（1953年）を出版後、師である亜浪の逝去などにより句作への意欲を失い、一時句作から遠ざかります。晩年には口語自由律の句作も試みましたが、1975年、肝硬変のため65歳で死去しました。

作品と評価

句集として『皿』（1941年、甲鳥書林）、『雨』（1953年、石楠社）、『年々去来の花』（全句集。1974年、丸の内出版。別冊として自伝『径路』）があります。

代表句としては、

葉桜の中の無数の空さわぐ
扇風機止り醜き機械となれり

などが知られています（いずれも『皿』に収録）。

篠原梵の句は、日常生活に題材を求め、鋭い感覚と知性によって表現の正確さを追求している点に特徴があります。また、その句には独特のしなやかなリズムがあり、読者に心地よい印象を与えます。冨田拓也は、篠原梵の作風について、師である亜浪の持っていた破調的傾向や、即物的手法における山口誓子の影響、そして切れ字や取り合わせを用いない散文的傾向を指摘しています。

外部リンク

篠原梵の俳句 現代俳句データベース
冬日の車窓（まど）に朱きあかるき耳持つ人々 篠原梵（冨田拓也）
* 篠原梵と口語俳句（高橋信之）

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