篠原模型店

篠原模型店：日本の鉄道模型史に名を刻む老舗メーカーの軌跡

篠原模型店は、日本の鉄道模型業界において長年にわたり、その存在感を示してきたメーカーです。特に、独自開発のフレキシブル線路は高い評価を受け、多くの愛好家に親しまれてきました。この記事では、篠原模型店の歴史、製品、そして現在の状況について、詳細に解説します。

草創期から高度経済成長期へ：フレキシブル線路の誕生と発展

1952年、横浜市で創業した篠原模型店は、当初は駐留軍関係者を主な顧客として、模型店を営んでいました。その後、1955年には、画期的な製品となるフレキシブル線路「SINOHARA TRACK」を開発・発売。自由に曲げることができるこの線路は、鉄道模型レイアウトの可能性を大きく広げ、瞬く間に人気を博しました。

1959年には横浜市中区本牧町に移転、1970年には伊勢佐木町に支店を開設するなど、事業は順調に拡大していきます。この時代、篠原模型店は、イギリスのPeco、ドイツのFleischmannと並び、世界的に高い評価を得ていた数少ない日本の鉄道模型線路メーカーの一つでした。Nゲージ、HOn2½、HOn3、12mm、13mm、Sn3、HO(Code100、83、70)、Sゲージなど、幅広いゲージに対応した線路やポイント（分岐器）を製造・販売し、特にいくつかのゲージについては事実上同社の独占供給状態になるほどでした。アメリカへの輸出も積極的に行っていました。

時代の変化と再起：閉業と復活、そして現在

2004年頃、本牧店を閉店した後も、数度の移転を経て営業を続けてきましたが、2015年7月に一旦閉店。しかし、同年10月には創業者の自宅で営業を再開するなど、粘り強い経営姿勢を見せていました。しかし、2018年4月には公表することなく生産を終了。その後、整理営業を経て、2019年頃には閉業に至りました。

しかし、篠原模型店の歴史はそこで終わらなかったのです。2020年2月1日、株式会社井門コーポレーションが篠原模型店のレール工場と製造技術を受け継ぎ、「QUALITY TRACK BY IMON」として製品供給を開始すると発表されました。これは、篠原模型店時代の商標を使用する形で、製品の供給が継続されることを意味していました。

2023年現在、井門コーポレーションはフレキシブル線路などを発売していますが、篠原模型店時代のように多様なゲージやポイントなどの製品展開は、まだ実現していません。かつての豊富な製品ラインナップが復活するのかどうか、今後の展開に注目が集まっています。

篠原模型店の歴史的意義

篠原模型店は、日本の鉄道模型文化の発展に大きく貢献しました。独自の技術開発力と、多様なニーズに応える製品展開によって、長年にわたって多くの愛好家から支持されてきました。閉業後も、その技術やブランドは引き継がれており、日本の鉄道模型史において重要な役割を果たしたメーカーとして、今後も記憶され続けることでしょう。その歴史は、単なる企業史にとどまらず、日本の高度経済成長期から現代に至るまでの社会情勢の変化を反映した、興味深い物語として捉えることができます。今後の展開を含め、引き続きその動向に注目していきたいメーカーです。

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