篠山鉄道

篠山鉄道：幻の鉄路

篠山鉄道は、かつて兵庫県多紀郡味間村（現在の丹波篠山市）と同郡篠山町（同）を結んでいた鉄道路線、およびその運営会社です。国鉄篠山駅（現在の篠山口駅）が市街地から離れていたため、そのアクセス路線として1915年に開業しました。しかし、1944年に国鉄篠山線が開通したことで、その役割を終え、短い歴史に幕を閉じました。

路線データ

路線距離：4.9km
軌間：1067mm
駅数：5駅
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：なし（全線非電化）
閉塞方式：不明

運行形態

1942年11月15日改正当時、篠山 - 篠山町間を11往復半運行しており、所要時間は全線で13分でした。

歴史

1911年6月12日：坊ケ内安治郎ら6名に鉄道免許状が下付される（篠山-大澤間）。
1913年4月27日：篠山軽便鉄道として会社設立。
1915年9月12日：弁天 - 篠山町間が開業。同年度中に国鉄との連帯運輸を開始。
1919年5月：伊藤英一の株買占めにより末正盛治が社長に就任。
1921年2月15日：篠山町駅を町中心部へ移転し路線延長。西町駅が開業。
1923年2月17日：鉄道免許状下付（多紀郡篠山町-同郡福住村間）。
1925年11月18日または26日：篠山鉄道に社名変更。
1925年12月10日：篠山駅構内まで線路を延長し、福知山線と接続。弁天駅は廃止。
1926年4月24日：鉄道免許失効（多紀郡日置村-同郡福住村間）。
1935年1月16日：瓦斯倫動力併用実施。
1935年2月15日：魚の棚駅が開業。
1937年10月13日：鉄道免許失効（多紀郡篠山町-同郡日置村）。
1944年3月1日：国鉄篠山駅が篠山口駅に改称。
1944年3月21日：全線廃止。

駅一覧

1915年時点：弁天駅 - 東吹駅 - 岡野駅 - 篠山町駅
1944年時点：篠山駅 - 東吹駅 - 岡野駅 - 西町駅 - 魚の棚駅 - 篠山町駅

開業当初の起点であった弁天駅は、篠山駅から徒歩圏内でしたが、少し離れた場所に位置していました。

接続路線

篠山駅：福知山線篠山駅（現・篠山口駅）

車両

篠山鉄道では、蒸気機関車や客車が使用されていました。

蒸気機関車

1（2代）: 元鉄道院1形。英国W・G・バグナル製のタンク機関車。
2（2代）: 石川鐵工所製のタンク機関車。
2（3代）: 日本車輌製造製のタンク機関車。後に宮崎交通へ譲渡。
608: 元鉄道院600形。ナスミス・ウィルソン製のタンク機関車。京都市を経て入線し、後に高知鉄道へ譲渡。

客車

ハフ1・ハフ2: 梅鉢鉄工所製の木製2軸三等緩急車。湊鉄道へ譲渡。
ハ4: 大阪鉄道より購入した木製2軸三等車。湊鉄道へ譲渡。
ロハ5: 大阪鉄道より購入した木製2軸二三等車。後に上信電気鉄道へ譲渡。
ハブ6・ハブ7: 南海鉄道より購入した木製2軸三等緩急車。上信電気鉄道に譲渡。

バス事業

1934年時点で1路線を運営していました。

参考文献

安保彰夫「篠山鉄道始末記」『鉄道ファン』No.250
「交通・通信」『篠山町75年史』篠山町役場
中川浩一「失われた鉄道・軌道を訪ねて〔5〕失われた鉄道・軌道を調べるには」『鉄道ピクトリアル』140号
和久田康雄『私鉄史ハンドブック』電気車研究会、1993年。
沖田祐作 編『機関車表 私設企業』滄茫会、1993年。
小川功「地方公益企業の乗取失敗と関与銀行家の苦悩--篠山軽便鉄道を事例として」『彦根論叢』第321号。
鉄道院『大正四年度鉄道院年報』 国有鉄道之部
今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』 9 関西2、新潮社、2009年。
『大正十年兵庫県統計書』 第13・14編

関連項目

廃線

外部リンク

丹波篠山インターネットテレビ - 「篠山軽便鉄道」（1930年/1分36秒）の記録映像
* 地方公益企業の乗取失敗と関与銀行家の苦悩 : 篠山軽便鉄道を事例として - 小川功、彦根論叢

篠山鉄道は短命でしたが、地域の足として重要な役割を果たしました。その歴史を振り返ることは、鉄道の多様な姿を知る上で貴重な機会となるでしょう。

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