米国婦人一致外国伝道協会

米国婦人一致外国伝道協会（The Woman's Union Missionary Society of American for Heathen Lands, 略称WUMS）は、19世紀にアメリカで設立された、女性による海外伝道団体です。当時、海外伝道は主に男性によって行われていましたが、WUMSは女性の視点と能力を活かし、アジア地域を中心に独自の伝道活動を展開しました。

設立の背景

1810年に組織されたアメリカン・ボードは男性が運営しており、男性宣教師を派遣していました。しかし、アジア地域の女性への伝道には、女性宣教師の存在が不可欠であるという認識が高まっていました。社会福祉事業家であったセラ・P・ドリーマスは、この問題意識を共有する同志を募り、1861年にWUMSを設立しました。

南北戦争とWUMSの活動

WUMSの設立直後、アメリカは南北戦争という未曽有の危機に見舞われました。男性が兵士として戦場へ赴く中、女性たちは教会を中心にグループを組織し、前線の兵士への物資補給という重要な役割を担いました。この活動を通じて、女性たちは社会的な発言力を増していき、WUMSの活動を後押しする大きな力となりました。

海外伝道活動の展開

WUMSは、戦時中の厳しい状況下でも資金集めに奔走し、1861年11月には最初の女性宣教師をビルマ（現ミャンマー）へ派遣しました。その後も、1863年にインド、1869年に中国へと宣教師を派遣し、アジア地域での伝道活動を本格化させました。

日本への進出と横浜共立学園の設立

1871年6月、WUMSは日本の横浜に宣教拠点を設置することを決定し、メアリー・プライン、ルイーズ・ピアソン、ジュリア・クロスビーの3名の女性宣教師を派遣しました。彼女たちは、横浜における女子教育の必要性を痛感し、横浜共立学園を設立しました。横浜共立学園は、キリスト教精神に基づいた女子教育を行い、多くの優秀な人材を輩出しました。

WUMSの特徴

WUMSは、監督教会、長老教会、会衆派教会、オランダ改革派教会、メソジスト派教会、バプテスト派教会といった、プロテスタント主要6教派の女性信徒が、個人の意思に基づいて参加する形で運営されていました。会員の中には、女性雑誌編集者や奴隷解放運動家など、社会的に影響力のある人物もいました。WUMSは、独身女性を宣教師として派遣することを原則とし、未亡人や宣教師の娘などの独身女性を優先的に派遣しました。

WUMSは、女性による海外伝道という新たな道を切り拓き、アジア地域における教育、医療、社会福祉の向上に大きく貢献しました。また、アメリカ国内においては、女性の社会進出を促進し、その地位向上に貢献したという点で、歴史的に重要な意義を持っています。

参考文献
* 横浜プロテスタント史研究会『横浜開港と宣教師たち ―伝道とミッション・スクール』有隣堂〈有隣新書66〉、2008年9月15日。ISBN 978-4896602043。

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