粒子線治療

粒子線治療とは

粒子線治療は、放射線治療の一種で、陽子線や重粒子線といった粒子線をがん細胞に照射することで、がん細胞を破壊する治療法です。従来のX線治療に比べて副作用が少ないとされ、近年注目を集めています。

粒子線治療の種類

粒子線治療には、主に以下の種類があります。

速中性子線治療
線形加速器などを用いて中性子線を照射する治療法です。
陽子線治療
線形加速器などを用いて陽子線を照射する治療法です。体表面での線量を低く抑えつつ、腫瘍組織で線量がピークになる特性があります。公的医療保険の適用範囲が拡大されています。
重粒子線がん治療
シンクロトロンを用いて炭素などの重粒子線を照射する治療法です。陽子線治療と同様に、公的医療保険の適用対象となるがんが増えています。
中性子捕捉療法
中性子増感元素をがん細胞に取り込ませ、中性子線を照射することでがん細胞を破壊する治療法です。

これらの治療法は、それぞれ特徴が異なるため、がんの種類や患者さんの状態に合わせて使い分けられます。

粒子線治療の特徴

高い治療効果
粒子線は、X線に比べてがん細胞に対する生物学的効果比（RBE）が高いとされています。そのため、少ない線量でがん細胞を破壊することが可能です。
速中性子線はX線の約4倍、重粒子線は3倍、陽子線は1.1倍の効果があるとされています。
副作用が少ない
粒子線は、X線に比べて周囲の正常組織への影響が少ないとされています。そのため、副作用を抑えた治療が可能です。
複数回の照射も可能で、X線治療が困難な症例にも適用できる場合があります。

粒子線治療の保険適用

2022年4月現在、以下の疾患が公的医療保険の適用対象となっています。

陽子線治療:
頭頸部癌
小児癌
骨軟部腫瘍
前立腺癌
肝細胞癌
肝臓内部の胆管癌
膵臓癌
大腸癌手術後に骨盤内に再発した癌
重粒子線治療:
頭頸部癌
骨軟部腫瘍
前立腺癌
子宮頸部腺癌

ただし、胃や腸など、常に動いている臓器や粘膜が薄い臓器は、正確な照射が難しく、潰瘍や穿孔のリスクがあるため、粒子線治療の対象外となる場合があります。

粒子線治療の注意点

施設が限られている
粒子線治療は、高度な医療技術を必要とするため、実施できる施設が限られています。日本では、2022年時点で25施設（陽子線治療施設18、重粒子線治療施設6、両方実施できる施設1）で実施されています。
治療費が高額
粒子線治療は、公的医療保険の適用対象となる疾患が増えていますが、自由診療となる場合もあり、治療費が高額になる場合があります。事前に費用や保険適用について確認することが重要です。

粒子線治療の今後

粒子線治療は、がん治療の選択肢として今後ますます重要になると考えられます。治療技術の進歩や保険適用範囲の拡大により、より多くの患者さんが粒子線治療の恩恵を受けられるようになることが期待されます。

関連情報

日本放射線腫瘍学会
米国放射線腫瘍学会

参考文献

日本放射線腫瘍学会
各医療機関のウェブサイト

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