粛慎 (日本)

粛慎（みしはせ、あしはせ）についての考察

粛慎（みしはせまたはあしはせ）は、日本の古典文献である『日本書紀』や『続日本紀』に登場する古代の民族であり、その実態や歴史については多くの考察がなされています。最初に登場するのは、欽明天皇の時代で、544年のことです。この記述によると、粛慎人が佐渡島に到着したとされています。

粛慎の呼称とその混乱

粛慎の訓読みには「みしはせ」と「アシハセ」の二つの説が存在し、どちらが正しいかは不明です。この混乱は、片仮名の「ア」が見の字を省略した「ミ」の音に似ていることから生じています。このため、さまざまな解釈が生まれました。

『日本書紀』に見られる粛慎の記述

『日本書紀』には、粛慎に関する主に三つの重要な記述が存在します。1つ目は、欽明天皇の時に彼らが佐渡島へ来たこと、2つ目は、斉明天皇の時代に阿倍比羅夫による粛慎の討伐、3つ目は、天武天皇及び持統天皇の時代における粛慎の来訪と官位の授与です。

これらの記録から、粛慎が何を意味するか、また彼らがどのような集団であったかについては様々な説が提唱されています。

粛慎の民族的背景

一つの説は、粛慎を蝦夷（えみし）と同一視するものであり、その呼称が中国の古典にも見られる歴史ある名字だからだとしています。

もう一つの見解では、紀元前の中国文献に登場する「しゅくしん」と同じツングース系の民族であるとされています。粛慎が黒水靺鞨に関連する可能性もあり、その遺跡や出土品に樺太との深い関係性が指摘されています。

さらに、粛慎が蝦夷や「しゅくしん」とは異なる別の民族であったとする説もあります。この説には、ニヴフやアレウトという現存しない民族の可能性も含まれています。

歴史的な記録とその解釈

欽明天皇の時代には、粛慎人が佐渡島に到来し、地元の人々は彼らを「人間ではない」とみなし、鬼と恐れられていました。いっぽう、斉明天皇の時代には、粛慎に対して数回の討伐が行われ、阿倍比羅夫が粛慎を征討した際の記録が残っています。その中で、戦の成果として生きたヒグマや捕虜を献上されたことが記されています。

また、天武・持統朝における粛慎に関する記録もあり、676年には新羅の使者とともに粛慎人が来訪したとされ、その後の694年には官位が与えられたことが記されています。

粛慎の文化的影響

その後の『続日本紀』にも粛慎に関する記録があり、720年には津軽の津司が粛慎国の風俗を視察するために派遣されました。これにより、粛慎が日本の歴史においておそらく影響を与えた部族であったことが示唆されています。

結論

粛慎は正確な位置づけが難しい民族であり、古代日本の歴史の中で重要な役割を果たしていた可能性があります。彼らに関する記録は断片的であり、さらなる研究と考察が必要でしょう。古代の日本とその周辺部族との交流を理解する上で、粛慎の存在は興味深いテーマです。

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