粟津の戦い

粟津の戦い

粟津の戦い（あわづのたたかい）は、寿永3年1月20日（1184年3月4日）に、近江国粟津（現在の滋賀県大津市）で行われた、源義仲と源頼朝が派遣した東国武士団との間の戦いです。この戦いは、治承・寿永の乱（源平合戦）における重要な一局面であり、木曾義仲の勢力滅亡の決定的な要因となりました。

戦いの背景

法住寺合戦後、源頼朝は、弟の範頼と義経を総大将とし、傘下の東国武士団に義仲討伐を命じました。宇治川の戦いなどで敗北を喫した義仲は、後白河法皇を擁して京都から脱出しようと試みますが、六条河原の戦いで再び敗れ、今井兼平ら僅かな兵を連れて、根拠地である北陸への逃走を余儀なくされました。

戦闘の経過

近江国粟津に辿り着いた義仲軍は、長年信濃国の支配を巡って対立していた甲斐源氏の武将、一条忠頼率いる軍勢と遭遇しました。度重なる敗戦で戦力として成り立たなくなっていた義仲軍は、この戦いで壊滅的な打撃を受けました。

生き残ったのは、義仲、今井兼平、巴御前、手塚光盛、手塚別当の僅か5騎でした。義仲は、手塚別当に逃げるように促しましたが、別当は躊躇し、その間に手塚光盛も別当に逃げるよう説得しましたが、別当は討ち死にし、光盛も敵に囲まれて討ち死にしてしまいました。義仲は巴に逃げるように勧め、巴は義仲に最後の奉公として敵将恩田八郎の首を討ち取って戦場を離脱しました。

最終的に、義仲に従うのは兼平のみとなりました。義仲は、自害する覚悟を決め、粟津の松原へ踏み込みました。しかし、馬の脚が深田に取られて動けなくなり、そこを敵に顔面を矢で射られて討ち死にしました。義仲の最期を見届けた兼平も、後を追って自害し、木曾源氏の勢力はここに滅亡しました。

義仲を討った人物について

義仲を討った人物については、複数の説があります。『平家物語』と『吾妻鏡』では、三浦氏の庶流である石田為久が討ち取ったとされていますが、『愚管抄』では義経配下の伊勢義盛が討ち取ったと伝えられています。いずれが正しいかは定かではありません。

戦いの影響

粟津の戦いは、源平合戦における重要な転換点となりました。この戦いで木曾義仲が滅亡したことで、源頼朝は平氏討伐における主導権を確立し、鎌倉幕府の成立へと繋がっていきました。

参考文献

* 関幸彦、福田豊彦 編『源平合戦事典』吉川弘文館、2006年12月。ISBN 4-642-01435-7。

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