伊勢義盛

伊勢義盛（いせ よしもり）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した武士であり、源義経の郎党としてその名を知られています。『吾妻鏡』では能盛（よしもり）と表記され、「源義経四天王」の一人としても数えられています。また、伊勢三郎の名でも広く知られています。彼の出身地は伊勢国または上野国とされていますが、確かなことは分かっていません。

生涯

伊勢義盛の生涯については、史実と物語が入り混じっており、その実像を捉えるのは難しいとされています。『平家物語』では、伊勢鈴鹿山の山賊として登場し、『平治物語』では、上野国で義経が宿泊した宿の息子として描かれています。また、『源平盛衰記』では、伊勢の出身で、伯母婿を殺害して投獄された後、赦免されて上野国で義経と出会い、その「一の郎党」となったとされています。これらの記述は、いずれも物語の中の話であり、実際の出自は不明です。

『愚管抄』では、粟津の戦いで木曾義仲を討ち取ったのは義盛であるとされていますが、『吾妻鏡』や『平家物語』では、石田為久が義仲を討ち取ったとされています。義盛は、元暦2年（1185年）の壇ノ浦の戦いでは、平家の総大将である平宗盛とその息子の清宗を捕らえるという武功を挙げています。また、平家の捕虜を京都に護送する際には、有力御家人である土肥実平の後に続いて護送にあたっています。

しかし、義盛は義経の兄である源頼朝の不興を買うことになります。元暦2年（1185年）5月、義経が鎌倉入りを許されず腰越に留まっていた際、義盛は頼朝の妹婿である一条能保の家人と些細なことから乱闘騒ぎを起こしました。義経と能保が仲裁に入り、事態は収束しましたが、この騒ぎを聞いた頼朝は、義盛のような下っ端が驕っていると憤慨し、義経の立場を一層悪くしました。

文治元年（1185年）11月、義経と頼朝が対立し、義経が都を落ちる際にも、義盛は義経に同行しました。九州へ向かう船が暴風雨で難破し、一行が離散した後、義盛は単独で潜伏生活を送りますが、伊勢・伊賀の守護である山内首藤経俊を襲撃し、敗れて鈴鹿山へ逃亡しました。その後、文治2年（1186年）7月、鎌倉方に発見され、斬首された後、梟首されました（『玉葉』）。しかし、『義経記』では、義盛は最後まで義経と運命を共にし、平泉で討ち死にしたとされています。

現在、三重県四日市市川島町の西福寺境内には、伊勢義盛の墓があり、近くには三郎塚も残されています。

説話

『平家物語』の志度合戦では、伊勢義盛は僅か16騎で、3000騎を率いる阿波水軍に立ち向かい、平家の家人である田内左衛門教能を言葉巧みに欺いて降伏させたと語られています。また、勝浦でも近藤親家を懐柔したとされています。

『義経記』においては、義盛は最後まで義経と運命を共にし、平泉で討ち死にしたとされています。この説話は、義経と義盛の忠義と友情を強調するものであり、多くの人々に感動を与えました。

脚注

伊勢義盛は、物語の中で様々な役割を担い、その忠義と勇猛さから多くの人々に愛されました。彼は、源義経の忠実な家臣として、数々の困難を乗り越え、歴史に名を刻んだ人物です。

参考文献

上横手雅敬編著 『源義経 流浪の勇者』 文英堂、2004年。

関連作品

テレビドラマ
『源義経』（1966年、NHK大河ドラマ、演：田中春男）
『武蔵坊弁慶』（1986年、NHK新大型時代劇、演：ジョニー大倉）
『義経』（2005年、NHK大河ドラマ、演：南原清隆）

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