粟田丸 (特設巡洋艦)

粟田丸（あわたまる）

粟田丸は、1937年に三菱長崎造船所で建造された日本郵船の貨物船です。この船は、欧州への航路改善の一環として投入され、特に太平洋戦争中には特設巡洋艦としての役割を担いました。戦争発生前は、気軽にパナマ運河とスエズ運河を利用した往航を行っていましたが、時代の波によりその運航は大きく変わりました。

建造と運航の歴史

粟田丸はA型貨物船の四番船で、1937年3月に起工し、8月に進水、12月に竣工しました。その後は、パナマ経由でハンブルクまでの航路を就航していましたが、1939年の第二次世界大戦勃発により、運航は一時停止となります。この状況の中でアメリカ方面への配置換えが行われ、一時的に航路を休止しました。

軍艦への変貌

1941年に粟田丸は海軍に徴傭され、特設巡洋艦としての艤装が施されました。就役後は、第二十二戦隊に編入され、監視艇隊の母艦として釧路や横須賀を拠点に行動しました。1942年には、特設監視艇を支援する任務に就き、早朝の攻撃を受けることもありましたが、大きな損害は避けられました。

従事した作戦

粟田丸は主に北方海域の作戦に専念し、特にキスカ島の攻略やアッツ島への輸送任務に参加しました。1943年3月にはアッツ島へ到着し任務を成功させた後、同年7月にはキスカ島撤退作戦にも参加しました。特に、粟田丸は北方海域での警戒任務が主な役割でありました。

沈没の経緯

1944年10月、粟田丸はポンペイ島への輸送任務に出発し、定時に到着しましたが、その後の行動が運命を決定づけました。10月21日、アメリカの潜水艦グレイバックによる攻撃を受け、粟田丸は魚雷4発が命中し、大爆発を起こして轟沈しました。生存者はわずかで、232名の乗員や陸軍兵士が戦死してしまったのです。

除籍とその後

粟田丸は、その苦しい運命を背負い1944年1月に正式に除籍されました。艦長としては、牧兼幸と竹内平七が指揮を執っており、それぞれの重要な時期に艦を指揮していました。特に竹内大佐は、戦局の変化とともに様々な業務を遂行し、特設艦としての任務を全うしました。

粟田丸の歴史はその役割の変動を象徴しており、平和な時代の商船から戦争という激動の中での艦船へと変貌し、多くの人々の命を背負って活動していました。

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