粟鹿大明神元記

『粟鹿大明神元記』についての詳細

『粟鹿大明神元記』（あわがだいみょうじんもとつふみ）は、兵庫県に位置する粟鹿神社に関する重要な古文書です。この文書は、708年、和銅元年に新羅将軍の正六位上神部直根マロによって編纂されました。内容には、粟鹿神社の祭神である天美佐利命に関する情報や神社の由来が詳細に記録されています。さらに、神部氏の系譜も記されており、特に伊佐那伎命・伊佐那美命から続く系図は貴重な資料として評価されています。これらの記録が正確であれば、この元記は『古事記』や『日本書紀』に先行する形で成立した文書と見なされる可能性があります。

この元記は、元々九条家が所有していたものであり、1955年に是澤恭三によって再発見されました。その後、現在は宮内庁の書陵部に保管されています。

研究活動と主な発見

是澤恭三は、当初九条家の文庫内で『粟鹿大明神元記』の存在を発見し、その内容に関して多数の論文を執筆しました。彼の研究により、以下のような重要な点が明らかになりました。

1. 文書は鎌倉ないし室町初期の写しであること。
2. 粟鹿神社の主祭神が天美佐利命であることが確認された。
3. 文書にある和銅元年8月13日は『日本書紀』の持統5年に関連しており、両者の密接な関係が推測される。
4. 編纂者である神部直根マロは、『日本書紀』に記載されている三輪根麻呂と同一である可能性があること。
5. 竪系図が他の系図と比較しても非常に古い資料であること、特に和銅元年成立の記録が貴重であること。

研究の中で、田中卓や瀬間正之など、他の研究者もこの文書に着目し、それぞれの観点から分析を行なっています。田中は系譜部分の独自性や他文献との相異について考察し、瀬間は文字表記や古代語資料としての価値について議論を展開しました。

文献の影響と評価

『粟鹿大明神元記』は、その豊かな情報量と歴史的な文脈によって、神話や古代史、神道に関する研究に大きな影響を与えています。この文書はただの記録に留まらず、日本の初期史を理解するための貴重な材料として評価されています。また、他の古典文献と比較することにより、当時の信仰や社会状況、神々の位置付けに関する理解を深める手助けとなります。

このような研究の積み重ねによって、『粟鹿大明神元記』は、古代の日本における宗教的な信念や人々の生活を知る手掛かりとなる文書として、今後も重要視され続けることでしょう。

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