糞石

糞石とは

糞石（ふんせき、coprolite）とは、動物や人間の排泄物である糞が、長い年月をかけて化石化したものです。考古学や古生物学において、過去の生物の生態や環境を解明するための重要な資料として扱われています。

考古学における糞石

考古学では、糞石は当時の人々の食生活や健康状態を知る上で非常に重要な役割を果たします。糞石の内部には、消化されずに残った植物の種子や動物の骨、寄生虫の卵などが含まれていることがあります。これらの内容物を分析することで、当時の人々がどのような食料を摂取していたのか、どのような病気に罹っていたのかといった情報を得ることができます。

新大陸の考古学において発展した糞石研究は、日本では酸性土壌のため有機物が残りにくく、研究が遅れていました。しかし、近年では福井県若狭町の鳥浜貝塚で2000点を超える糞石が出土し、研究が大きく進展しました。鳥浜貝塚の糞石は、国際基督教大学の千浦美智子によって「ハジメ」、「シボリ」、「バナナジョウ」、「コロ」、「チョクジョウ」といった愛称で分類されています。これらの糞石を観察すると、肉眼でも魚の骨や鱗、植物の種子などが確認できる場合があります。また、薬品処理を行うことで、元の色や匂いを取り戻せることもあり、より詳細な分析が可能になっています。

鳥浜貝塚以外にも、滋賀県の粟津湖底遺跡や奈良県の唐古・鍵遺跡、鳥取県の青谷上寺地遺跡など、各地の遺跡から糞石が出土しています。これらの糞石を分析することで、当時の人々の生活様式や環境変化に関する貴重な情報を得ることができます。

古生物学における糞石

古生物学においても、糞石は重要な研究対象です。化石化した糞石は、恐竜などの古代生物の食性を知るための貴重な手がかりとなります。例えば、メアリー・アニングは、ジュラ紀の地層から発見された魚竜の化石の腹部に、ベゾアール（結石）がしばしば見られることに気づきました。これらのベゾアールは、化石化した魚の骨や鱗を含んでおり、糞石であると判明しました。この発見によって、魚竜が魚を捕食していたという事実が明らかになりました。地質学者ウィリアム・バックランドはアニングの発見に基づき、この化石を”coprolite” （糞石）と名付けました。

その他の糞石

考古学や古生物学以外でも、糞石は研究対象となることがあります。例えば、イギリスで発見されたロイズ銀行糞石は、長さ20cmにも及ぶ人糞の化石であり、当時の人々の食生活や健康状態を知る上で重要な資料となっています。

まとめ

糞石は、過去の生物の生態や環境を知るための貴重な資料です。考古学、古生物学、その他の分野において、糞石の研究は歴史や生物の謎を解き明かす上で重要な役割を果たしています。今後も、新たな発見や研究によって、糞石から得られる情報はますます増えていくことでしょう。

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