唐古・鍵遺跡

唐古・鍵遺跡：弥生時代の環濠集落

唐古・鍵遺跡は、奈良県磯城郡田原本町唐古および鍵に位置する、弥生時代の環濠集落の遺跡です。その規模の大きさや、大型建物跡、青銅器鋳造炉跡など、工房跡の発見から、弥生時代の日本列島における重要な勢力の拠点であったと考えられています。1999年には国の史跡に指定され、出土品は国の重要文化財に指定されています。

遺跡の概要

遺跡は奈良盆地の中央部、標高約48メートルの沖積地に位置し、現在の調査で確認されている範囲は約30万平方メートルに及びます。1901年に高橋健自によって紹介された当初から、全国各地からのヒスイや土器などが集まる一方、銅鐸の主要な製造地でもあったと見られています。1999年に史跡指定を受け、出土土器に描かれた多層式の楼閣が遺跡内に復元されています。

2004年には「唐古・鍵考古学ミュージアム」が開設され、出土品の展示が行われています。2018年には周辺が唐古・鍵遺跡史跡公園として整備され、「道の駅レスティ唐古・鍵」も開業しました。

遺跡の変遷

遺跡の範囲は、北地区、西地区、南地区、中央区の4つに大きく分けられます。

弥生時代

第1段階（弥生時代前期初頭から前半）

西地区から北地区にかけての微高地に居住区が存在したと考えられています。当時は周辺に川が流れる中州状であり、人工的な環濠はまだ存在しなかったと見られます。この時期の土器は、弥生土器の古い型式と縄文土器の晩期の型式が共存しており、集落が周辺集落に木器を供給する生産拠点でもあったと推定されています。

第2段階（弥生時代前期後半から中期初頭）

引き続き未完成の木器貯蔵穴が検出され、石包丁の製作工房があったと考えられています。集落の範囲は南地区にも広がり、弥生時代前期末頃には各地区を区画する大溝が掘られました。西地区の集落が最も大きく、総柱の大型建物跡が検出されています。

また、同時期の墓として木棺墓や方形周溝墓が検出されています。木棺墓から出土した人骨は現代人に近い様相を持ち、渡来系の人物であった可能性が指摘されています。

第3段階（弥生時代中期前葉）

周囲に環濠が巡り、集落が最も繁栄した時期とされています。集落全体を取り囲むように大環濠が造成され、さらにその外側に複数の環濠が掘削され、環濠帯を形成しました。集落内には井戸が掘られ、祭祀にまつわる土器などが検出されています。南地区には鋳造関連遺物が出土し、青銅器工房があったと推定されています。集落構造はエリアごとに異なる役割を持っていた可能性があります。

第4段階（弥生時代後期）

集落が被災・再生・発展した時期です。弥生時代中期後半から末にかけて集落各所で洪水跡が確認されており、繰り返し災害に見舞われたことが分かっています。環濠は再掘削が行われましたが、後期後半には埋められています。集落内に方形周溝墓が作られるようになり、特に南地区は墓域として再整備されたと考えられます。

第5段階（弥生時代終末から古墳時代前期）

大環濠帯が消失した時期にあたります。環濠は機能を失いましたが、集落は存続していたと考えられます。古墳時代前期には環濠集落が復活したと考えられています。

古墳時代以降

6世紀後半ごろから唐古・鍵遺跡に後期古墳が造営されました。遺跡東側からは古墳時代の集落が検出され、有力首長の存在が推定されています。その後、条里制により整備され、中世には荘園を管理する施設が存在したと推定されています。応仁の乱前後に武士団の所領となり、近世に入ると集落が統廃合されて現在に至っています。

発掘調査

遺跡は1901年に初めて紹介され、その後小規模な発掘調査が行われました。1936年には唐古池底の調査が行われ、弥生文化を総合的に理解できる遺跡として注目されるようになりました。1977年以降、奈良県立橿原考古学研究所や田原本町教育委員会によって発掘調査が行われ、遺跡の範囲や存続期間、環濠集落の実像などが明らかになってきました。特に楼閣の描かれた土器片の発見は、一般にも広く知られるようになりました。

主な遺物と弥生文化の復元

唐古・鍵遺跡からは、弥生時代全期間の遺物が出土します。特に弥生土器は、近畿地方の標準的な土器編年に位置づけられています。建物や鹿を描いた絵画土器が多く出土し、弥生時代の祭祀や生活を知る上で貴重な資料となっています。石器や木製製品も多く出土し、集落が石器製品や木器の生産地であったと考えられています。また、紡績具や織布の断片も発見されており、当時の技術を知ることができます。

金属器としては青銅器が出土し、鋳造関連遺物も発見されています。装身具としては、ヒスイ製の勾玉や水晶玉、ガラス小玉などが出土しています。動植物の史料も大量に出土し、当時の食生活や農業を知ることができます。

文化財

唐古・鍵遺跡の出土品は、国の重要文化財に指定されています。また、遺跡自体も国の史跡に指定されています。

まとめ

唐古・鍵遺跡は、弥生時代の環濠集落の様子を今に伝える貴重な遺跡です。出土品や復元された建物などから、当時の人々の生活や文化を知ることができます。考古学ミュージアムや史跡公園も整備されており、歴史に触れることができるスポットとしておすすめです。

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