糸井 (苫小牧市)

字糸井（いとい）

北海道苫小牧市の西部に位置する字。現在も地域の一部で住居表示が実施されていません。

地理的には、苫小牧市の西側広範囲にわたります。かつて一体だった地域から住居表示が実施されて町丁が分離独立したため、現状では海側と山側に分かれた飛び地となっています。東側は字高丘や字丸山、西側は字錦岡などと接しています。

歴史

糸井の地は、もともと漁業に従事する人々が出稼ぎで訪れる場所として開かれました。安政時代の終わり頃には、漁師向けの小さな宿場や、道具を修繕する鍛冶屋、心の拠り所となる寺などが設けられ、一つの集落としての形を整えていきました。特に、現在の製菓メーカーである三星の工場周辺が、この集落発祥の地と考えられています。

明治時代の末期になると、漁業に加え、農業や牧畜といった産業による定住が進みました。大正6年（1917年）6月1日には、国鉄室蘭線に小糸魚信号場（現在の糸井駅）が設置され、交通の便が向上します。国有未開地処分法に基づく無償貸付けや、水田を整備する造田事業といった施策により、新たな入植者も増えました。これにより地域は発展し、昭和30年（1955年）には111戸、618人の人口を数えるまでになりました。

ニュータウンとしての変貌

戦後、苫小牧港の開港に伴う臨海部の産業発展は、糸井地域にも大きな変化をもたらしました。昭和35年（1960年）に16戸の福祉住宅が建設されたのを皮切りに、昭和49年（1974年）度末にかけて公営住宅の建設も進められます。

昭和43年（1968年）度からは5ヵ年計画で、広さ118万平方メートルにも及ぶ大規模なニュータウンの建設が計画され、着手されました。昭和44年（1969年）度からは一般向けの宅地の分譲が始まり、その後も民間の不動産業者による住宅地の造成が継続されました。日本軽金属、苫小牧ケミカル、日東肥料、北日本倉庫、北海土建、苫小牧海運といった主要企業の社宅街も新たに形成されるなど、多くの人々が移り住むこととなります。

さらに、小学校や幼稚園、保育所といった教育・保育施設、郵便局などの公共施設に加え、スーパーマーケットや商店なども相次いで進出し、地域は急速に近代的なニュータウンへと大きく姿を変えていきました。

区画整理と町丁の分離

ニュータウンとして整備が進む一方で、区画整理や住居表示の実施により、字糸井から多くの町丁が分離独立していきました。昭和51年（1976年）9月1日には有明町、小糸井町、永福町、日吉町、光洋町が、昭和54年（1979年）11月1日には桜木町、しらかば町、日新町、豊川町が分離。その後も、昭和60年（1985年）9月1日には川沿町、柏木町が、平成2年（1990年）10月1日には有珠の沢町が、そして平成7年（1995年）11月1日には宮の森町、はまなす町といった町丁が新たに分離しています。

地名の由来

この地はかつて「小糸魚（こいとい）」と呼ばれていました。その名はアイヌ語の「コイトゥイェ」に由来するとされており、「浪・くずす・ところ」という意味を持っています。これは、海岸部の土地が低く、時化のたびに波浪によって土地が侵食され、削られていった地形的な特徴を示していると言われています。現在の「糸井」という地名に改称されたのは、昭和19年（1944年）のことです。

交通

地域の交通は、JR室蘭本線を境に大きく二つに分けられます。線路よりも南側の「鉄南地区」には主要幹線道路である国道36号線が通っており、道南バスが市内線や登別温泉方面へのバスを運行しています。一方、線路よりも北側の「鉄北地区」には道央自動車道が走っています。最寄り駅はJR北海道室蘭本線の「糸井駅」です。

地域内の施設

糸井地域には、鉄南地区を中心に様々な施設が立地しています。国道36号線沿いには、ラーメン山岡家やローソン、ファミリーマートといった飲食店やコンビニエンスストア、ネッツトヨタ道都やトヨタカローラといった自動車販売店が見られます。また、地域を代表する企業である三星の本社・工場や苫小牧本店、協和製菓の工場、さらには大型商業施設であるコンフォモール苫小牧、ダイソー、フイッシュランド、メガネサロンルックなども集積しています。その他、日本ユニパック苫小牧営業所や福祉施設の苫小牧ひまわり、温浴施設の苫小牧温泉ほのかといった施設も点在しています。

一方、鉄北地区には、苫小牧市都市建設部維持課の道路管理事務所や、糸井の森パークゴルフ、糸井ゴルフパーク54といったレクリエーション施設、ひかりの国幼稚園などが見られます。

郵便番号は053-0814で、集配業務は苫小牧郵便局が行っています。

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