紀吉継

紀 吉継の生涯と墓誌

紀 吉継（き の よしつぐ）は、奈良時代後期に活躍した女官です。生年は不明で、延暦3年1月25日（784年2月20日）に亡くなったことが墓誌から確認されています。彼女の家族背景は興味深く、父は従四位下参議・陸奥国按察使併鎮守副将軍勲四等の官職を有した紀広純です。吉継の墓誌には、彼女自身についての情報はほとんど残されていませんが、父の経歴が詳細に記されている点が特徴です。

墓誌の概要

紀吉継の墓誌は、約25センチメートルの縦と15センチメートルの横を持つ直方体の塼製で、中国の墓誌に倣って作られたものです。この墓誌は蓋がついており、罫線と文字が生乾きの状態で刻まれた後に焼成されています。墓誌は江戸時代に大阪府南河内郡の妙見寺の裏山から発見されたとされ、明治42年には古社寺保存法に基づき国宝（現在では重要文化財）に指定されました。今なお同寺にて保存されています。

この墓誌は、古代日本の墓誌の中でも最も新しいもので、現存する18例の中に含まれています。墓誌に刻まれた文面には、吉継の没年月日である「延暦三年」「朔癸酉丁酉」（正月25日）や、彼女の父紀広純についての情報が記されています。

吉継とその家族の歴史

紀 吉継の父、紀広純は、貴族として征夷に従事しましたが、宝亀11年（780年）に伊治呰麻呂の襲撃により道嶋大盾とともに伊治城で殺害されました。この事件は「宝亀の乱」として『続日本紀』にも記録されています。吉継自身についての詳細は少なく、官位やその他の経歴は不明ですが、光仁天皇や桓武天皇に仕えた女官であった可能性が高いとされています。

出土地と公葬地としての意義

紀吉継の墓誌が出土した地域は、二上山の麓に位置しており、奈良県との境に近い場所です。この地域からは他にも著名な墓誌や火葬墓、骨蔵器が発見されています。7世紀から8世紀にかけては、この地が官人の公葬地として使われていたと考えられています。これにより、吉継が生きた時代の奈良時代後期における貴族や女性の社会的地位や役割についても考察する手掛かりとなります。

吉継の墓誌は、彼女自身の生涯や業績についての詳細を直接伝えているわけではありませんが、彼女が生きた時代を知る上で貴重な資料となっています。物語の中で彼女のような女性たちがいかに位置づけられていたのか、今なお人々の関心を引きつけています。

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