紀昀

紀昀 (きいん) - 清代の官僚・学者

紀昀は、雍正2年6月15日（1724年8月3日）に生まれ、嘉慶10年2月14日（1805年3月14日）に亡くなった中国清代の著名な官僚および学者です。彼の本名や字は様々ありますが、特に「字暁嵐」と「号石雲」が知られています。生誕地は河間府献県ですが、祖先は江南から移住してきたと言われ、紀昀家系の本貫は応天府上元県に位置しています。彼の祖父は紀天申であり、紀昀は紀容舒の次男です。特に有名なのは、彼が『四庫全書』の編纂に重要な役割を果たした点です。また、彼の外祖母にあたる張氏の大叔父が明末の宦官曹化淳であることが、彼の人生の背景に影響を与えているとも考えられています。

略歴

紀昀は1747年に郷試で首席となり、1754年には進士の試験において第5位の成績を収めました。これにより、翰林院編修として一歩を踏み出し、その後侍読学士の地位に上り詰めます。しかし、1768年には姻戚が地方官として失態を犯したため、彼も連座して左遷され、ウルムチの辺境守備隊に配置されました。1771年に赦免された後、彼は再び翰林院編修に復帰します。

1773年から始まる『四庫全書』の編纂事業では、総纂官に任命され、以後侍読学士・内閣学士を歴任します。最終的には1805年、礼部尚書協弁大学士に昇進しますが、同年に亡くなりました。死後、朝廷から「文達」という称号を受けているため、紀昀はしばしば「紀文達公」とも呼ばれます。

『四庫全書』での貢献

紀昀は『四庫全書』の総纂官として、多くの権力を握っており、執筆される提要をすべて見直し、しばしば自ら手を加えたことが知られています。このため、『四庫提要』は彼の実質的な著作とみなされることが多く、彼の影響力が色濃く残っています。また、宋学に対しては批判的であり、当時評価が低かった戴震を採用したことは、紀昀がいかに学問の幅広さを理解していたかを示すものといえるでしょう。

紀昀は乾隆帝に寵愛されていた名文家でありながら、自身の詩文を保存しようとはせず、学術論文も書かなかったことから、後の学者たちから批判を受けることとなりました。この点は、彼の学問観や姿勢に対する議論を呼び起こす要因となっています。

著作

彼の著作の中で特に留意すべきは、志怪稗史（怪談奇談）の作品である『閲微草堂筆記』です。この作品は彼が残した貴重な文化遺産となっており、他の著作と同様に後世に大きな影響を与える存在となりました。特に、この作品には数多くの興味深い物語や逸話が収められており、中国文学の重要な一部とされています。

紀昀の業績や思想は、清代を通じて中国の学問と文化に多大な影響を与えただけでなく、その後の時代にも引き続き評価され、人々の記憶に刻まれています。

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