紅き月の巫女

『紅き月の巫女』は、テーブルトークRPG（TRPG）『ナイトウィザード』のリプレイ作品であり、全5話で構成されています。ゲームマスターでありライターでもある菊池たけしが執筆を担当し、石田ヒロユキがイラストを、みかきみかこが予告コミックやキャラクター作成のレビュー漫画を手がけています。

2002年4月号から2003年8月号にかけて『E-LOGIN』に掲載され、後にエンターブレインから文庫本として発売されました。『E-LOGIN』で同時連載された読者参加型ゲーム「六柱の巫女」とのクロスオーバーや、リプレイ出演の声優を起用したインターネットラジオ『ナイトウィザード通信』の立ち上げなど、『ナイトウィザード』初期の展開において重要な役割を担いました。また、『ナイトウィザード』リプレイの軸となる「みこシリーズ」の最初の作品でもあります。

概要

企画は2001年初夏、菊池たけしが『E-LOGIN』の編集担当にリプレイ連載を提案したことから始まりました。アダルトゲーム情報誌であった『E-LOGIN』での連載、声優の起用、インターネットラジオの配信は、当時としては困難とされていました。しかし、『E-LOGIN』の編集担当や、プレイヤーとして参加した矢薙直樹、小暮英麻らの協力により、2002年4月号から連載が実現しました。

文庫版のあとがきによると、『ナイトウィザード』自体が「『E-LOGIN』で連載されるリプレイのために作られた新しいゲーム」として開発されたことが明かされています。このリプレイは、『ナイトウィザード』の原点とも言える作品なのです。（同様の事例として、姉妹作であるTRPG『セブン＝フォートレス』が「砦シリーズ」リプレイのために作られたゲームであることが挙げられます）

あらすじ

輝明学園・秋葉原校に通う少年、真行寺命（しんぎょうじみこと）はある日、剣で少女の胸を貫く夢を見ます。その日の夜、彼は紅い髪の少女、緋室灯（ひむろあかり）と出会います。この出会いと、命が持つ剣「ヒルコ」の目覚めが、呪われた運命に囚われた二人の物語の始まりとなるのです。

登場人物

プレイヤーキャラクター

真行寺命（しんぎょうじみこと）（プレイヤー：矢薙直樹）
クラス：転生者 (Lv.0)
陰陽師の名家である真行寺家の分家出身。輝明学園秋葉原校の生徒で、16歳。いじめられっ子であり、先輩の菊田健二に恋心を抱いています。妹の望がエミュレイターに襲われた際、真行寺家に伝わる剣“ヒルコ”を召喚してウィザードとして覚醒します。
その正体は魔王アスモデートによって作られたエミュレイター側の勇者であり、幾度も転生を繰り返して“柱”の封印を解こうとしていました。しかし、“柱”を封じた神によって七番目の巫女（＝緋室灯）の前世と恋仲になるように宿命づけられ、アスモデートを裏切って七番目の巫女を殺す運命にありました。アスモデートの策により命を落としますが、TISの助力で一時的に復活し、アスモデートを倒して因縁を断ち切ります。しかし、力を酷使したことで消滅までの時間が早まり、灯の誕生日を祝う前に消滅してしまいます。
その後、同じ時代の同じ人間に転生し、「真行寺命」として再びこの世界に戻ってきますが、「紅き月の巫女」本編に関する記憶は失われています。

緋室灯（ひむろあかり）（プレイヤー：小暮英麻）
クラス：強化人間 (Lv.0)
ウィザードの傭兵斡旋企業「絶滅社」所属のエージェント。16歳。誕生日は2月15日。世界を滅ぼすための兵器である“六本の柱”の最後の封印、「七番目の巫女」です。命の死後、七番目の巫女の封印を解くことを防ぐためにウィザード達に始末されかけますが、ナイトメア、マユリなどの協力で脱出し、アスモデートとの最終決戦に挑みます。武器は射撃型“箒”の「ガンナーズブルーム」です。

マユリ＝ヴァンスタイン（プレイヤー：田中信二）
クラス：魔術師 (Lv.0)
イギリスの「ダンガルド魔術学校」に通う魔術師の少女。14歳。ドイツ人と日本人のハーフ。師であるマーリンの特命により、“魔導書”を探して輝明学園秋葉原校に潜入しています。おむすびが好きで、月衣の中に炊飯器とお米を常備しています。愛称は「マユりん」。“魔導書”を入手し、全ての真実を知った彼女は、マーリンの命令に背き、灯を救います。そして、イギリスのストーンヘンジに隠されたアスモデートの月匣への入り口を開き、灯を送り出した後、エミュレイターから灯を守るために爆炎の中に消えます。しかし、マーリンに彼女からの報告書が届いており、生存が確認されています。

ナイトメア（プレイヤー：鈴吹太郎）
クラス：夢使い (Lv.4)
フリーのウィザードとして傭兵家業を営むベテラン夢使い。本名は「鈴木太郎」。年齢不詳。マントに身を包み、眼帯をかけた怪しい風体の男。絶滅社に雇われており、灯とコンビを組み、命を鍛え、防御魔法で仲間を守ります。妊娠6か月の妻（名前は花子）を抱える一家の大黒柱でもあります。終盤では七番目の巫女であることが判明した灯を殺すためのウィザード達の指揮を執りますが、マユリの説得と灯の意志を聞き、灯を助けるためにウィザード達に戦いを挑みます。

ノンプレイヤーキャラクター

真行寺望（しんぎょうじのぞみ）
命の妹。14歳。いつも学校をサボろうとする命を心配しています。彼女がエミュレイターに襲われたことが、命がウィザードとして覚醒するきっかけとなります。実は、世界を滅ぼすための兵器“柱”を司る六柱の巫女の一人、第六柱<冥>の巫女です。

菊田健二（きくたけんじ）
命の先輩。輝明学園秋葉原校の図書委員長。いじめられていた命の心の支えであり、図書室に寝泊まりしているマユリにも寛大な態度で接します。その正体は裏界の魔王の一人、アスモデートです。

ゆうか
命がある日偶然出会った少女。彼女の正体は第八世界ファー・ジ・アース（地球）の観察者であるTIS（ティス）です。

御門霧花（みかどきりか）
陰陽師の名家、御門一族の娘。「六柱の巫女」では第五柱<天>の巫女であり、ウィザードとエミュレイターに狙われています。灯達に助けられ、親交を持つようになります。

どんぺり
灯のペットであるフェレット。灯にとっては数少ない心を許せる友達です。物語後半で命の手品によってヒルコで真っ二つにされてしまいますが、後に生存が判明します。

その他

絶滅社
世界規模で活躍する傭兵斡旋企業。ウィザードとエミュレイターとの戦いにウィザード陣営として参加しています。

柱
裏界の魔王アスモデートが作り出した巨大な爆弾。全長数kmに及ぶ巨大な角柱状の物体で、衛星軌道上から落とすことで地球に大破壊をもたらし、世界結界を消滅させることができます。砕かれた柱に込められていたアスモデートの魔力は6つに分断され、人間の魂に封じ込められました。「六柱の巫女」とは、その柱の魔力を封じられた魂を持った人間の転生者たちです。

ヒルコ
真行寺家が代々継承している護り刀。兄妹である真行寺命と真行寺望は、近い将来、どちらが剣の正統な所有者になるかを殺し合いで決定しなくてはならないという掟があります。

みこシリーズ
『紅き月の巫女』以後も『ナイトウィザード』は雑誌連載リプレイを続け、「みこ」の字がタイトルに添えられました。これらをみこシリーズと呼びます。

六柱の巫女
『紅き月の巫女』連載と連動して『E-LOGIN』で連載されていた読者参加ゲーム。世界中に存在する5人の「柱の巫女」をエミュレイターとウィザードが奪いあうというゲームです。

マジカル・ウォーフェア
『紅き月の巫女』および『六柱の巫女』は『ナイトウィザード』や『セブン＝フォートレス』のいくつかのリプレイをつなぐ大河物語の一編でもあります。

関連作品

聖なる夜に小さな願いを：本作の後日談的意味合いを持つ

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