紅葉 (航空機)

二式陸上初歩練習機「紅葉」

二式陸上初歩練習機「紅葉」は、第二次世界大戦中の日本海軍によって使用された練習機です。この機体は、K9W1という機種記号を持ち、製造は渡辺鉄工所（後の九州飛行機）が担当しました。また、ドイツのBü 131ユングマンをライセンス生産したもので、米軍では「Cypress」と名付けられました。

機体の開発背景

日本海軍では、旧式化した三式陸上初歩練習機の代替機を求め、既に民間商社によって購入されていたBü 131ユングマンのテストを実施しました。このテストは1938年（昭和13年）に行われ、機体の性能や操縦性が優れていること、そして製造・維持費が低く抑えられることが高く評価されました。

1939年（昭和14年）には20機を追加購入し、さらなるテストを行った結果、1940年（昭和15年）6月に海軍は渡辺鉄工所にBü 131の国内生産を指示しました。渡辺鉄工所はビュッカー社から製造権を獲得し、1941年（昭和16年）8月には試作1号機を完成させました。その後、試作機および増加試作機を合計17機製作し、1943年6月に正式採用され、同年の漢字名称制定に従い「紅葉一一型」と名付けられました。

機体の構造と性能

「紅葉」は複葉機で、胴体は鋼管骨組みに羽布張り（一部金属張り）、翼は木製骨組に羽布張りという設計が特徴です。エンジンは国産の初風に換装され、計器類も国内製品に置き換えられましたが、基本的な設計はBü 131に忠実でした。優れた飛行性能を持ち、初歩練習機としては予想以上のパフォーマンスが評価されましたが、軽量により気流の影響を受けやすいという欠点も指摘されました。また、搭載エンジンの性能が不安定で振動が多いことも問題でした。

製造は制式採用前の1942年（昭和17年）から始まり、渡辺では217機（日立製の機体を含む）、日立では60機が生産され、合計277機にのぼりました。しかし、1943年には実用機の高性能化が進み、「紅葉」のような初歩練習機の役割が薄れたため、生産は中止されました。

他の関連機体

同じBü 131ユングマンは、陸軍でも四式基本練習機（キ86）として採用されており、キ86の生産は日本国際航空工業が担当しました。

性能概要

• - 全長：6.62 m
• - 全幅：7.37 m
• - 全高：2.67 m
• - 自重：407.2 kg
• - 正規重量：638.5 kg
• - 主翼面積：24.0 m²
• - エンジン：日立 初風 一一型（空冷倒立直列4気筒エンジン 105 hp）
• - 最大速度：182 km/h
• - 航続距離：641 km
• - 乗員：2名
• - 武装：なし

「紅葉」が果たした飛行訓練の役割は、日本海軍のパイロット育成に寄与しましたが、戦局の変化によりその運命は短命でした。

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