純映画劇運動

純映画劇運動：日本映画の夜明け

純映画劇運動は、1918年から1923年頃にかけて、日本の映画界に吹き荒れた革新の嵐でした。帰山教正、谷崎潤一郎、小山内薫、田中栄三といった先駆者たちが、旧態依然とした映画界に新風を吹き込もうと立ち上がりました。

運動の背景

第一次世界大戦の影響で、海外から質の高い映画が流入し、大正デモクラシーの波が社会全体を覆う中で、古いスタイルの日本映画に対する批判が高まりました。歌舞伎や新派劇の影響が色濃く残る当時の映画は、「活動写真」と呼ばれ、現代劇とは言い難いものでした。

運動の目的

純映画劇運動は、欧米の映画を模範としつつ、以下の点を重視しました。

女優の起用（女形の廃止）
字幕の使用（活動弁士の廃止）
自然な演技
物語内容の現代化
映画的技法の重視
演技・演出の写実化

これらの要素を取り入れることで、日本映画を国際水準に引き上げ、より芸術性の高い表現を目指しました。

運動の先駆者たち

帰山教正は、理論書『活動写真劇の創作と撮影法』で、映画は演劇の模倣であってはならないと主張し、映画独自の表現方法を追求しました。彼は自らメガホンを取り、『生の輝き』と『深山の乙女』を製作。花柳はるみを主演に起用し、彼女は日本初の映画女優となりました。

谷崎潤一郎は、『アマチュア倶楽部』で、小山内薫は『路上の霊魂』で、それぞれの理想とする映画を追求しました。しかし、これらの作品は、外国映画の模倣に終始し、興行的には成功しませんでした。

田中栄三は、『京屋襟店』で、日本人の生活を日本人の視点から写実的に描き、新たな可能性を示しました。

運動の終焉と影響

関東大震災の影響で、純映画劇運動は終焉を迎えます。しかし、この運動は、日本映画界に大きな足跡を残しました。女優の起用が一般化し、演出技術が発展し、「活動写真」が「映画」へと進化する上で、重要な転換点となりました。

純映画劇運動は、短い期間で幕を閉じましたが、その精神は、後の日本映画界に受け継がれ、数々の名作を生み出す原動力となりました。日本映画の夜明けを告げた、この革新的な運動は、映画史に燦然と輝いています。

もう一度検索