紙屋悦子の青春

紙屋悦子の青春

『紙屋悦子の青春』は、松田正隆による戯曲で、後に黒木和雄監督によって映画化されました。映画版は2006年8月12日に公開され、黒木監督の遺作となりました。

ストーリー

物語は終戦間際の鹿児島が舞台。紙屋悦子は兄夫婦と暮らしており、ある日、縁談の話が舞い込みます。相手は、悦子が密かに思いを寄せている明石の親友、永与でした。

映画版

あらすじ

昭和20年春、鹿児島の田舎町。悦子は兄夫婦と共に暮らしています。彼女は兄の後輩である明石少尉に恋心を抱いていますが、その明石から、彼の親友である永与少尉との縁談を持ちかけられます。明石と永与は同じ航空隊に所属していますが、明石は航空兵、永与は整備担当。戦況が悪化する中、明日をも知れぬ身の明石は、悦子の将来を永与に託そうとします。悦子は明石への秘めた思いを抱えながらも、朴訥な永与に少しずつ心を開いていきます。

明石は特攻隊に志願し、出撃前夜に別れを告げに来ます。悦子は彼を追いかけることもできず、ただ涙を流すしかありませんでした。数日後、永与が明石の死を伝えに訪れ、明石からの手紙を悦子に渡します。そして、自身の勤務地が変わることを告げ、去ろうとする永与に、悦子は「ここでいつまでも待っていますから、きっと迎えに来てください」と伝えます。二人の思いが通じ合い、これからの長い人生を共に生きることを決意するのでした。

歳月が流れ、結婚して長年連れ添った永与と悦子は、入院中の病院の屋上で空を見上げながら、穏やかな時間を過ごしています。

キャスト

紙屋悦子：原田知世
永与少尉：永瀬正敏
明石少尉：松岡俊介
紙屋ふさ：本上まなみ
紙屋安忠：小林薫

スタッフ

原作：松田正隆
監督：黒木和雄
脚本：黒木和雄、山田英樹
音楽：松村禎三
美術監督：木村威夫
撮影：川上皓市

受賞歴

第31回報知映画賞　特別賞
第61回毎日映画コンクール　撮影賞／川上皓市
第21回高崎映画祭　最優秀助演女優賞／本上まなみ
第2回おおさかシネマフェスティバル　助演女優賞／本上まなみ
キネマ旬報2006年度日本映画ベスト・テン4位
* 2006年度日本映画ペンクラブ　邦画2位

『紙屋悦子の青春』は、戦争という時代背景の中で、人々の心の機微を丁寧に描き出した作品です。原田知世、永瀬正敏、松岡俊介をはじめとするキャストの演技、黒木和雄監督の演出、そして美しい映像が、観る者の心に深く刻まれます。激動の時代を生きる人々の、ささやかな幸せを願う気持ちが伝わる作品です。

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