経録

経録：仏教聖典の目録

経録とは、主に中国で編纂された仏教聖典（仏典）の目録を指す仏教用語です。経典の整理や分類、研究に欠かせない重要な資料であり、仏教史研究においても貴重な史料となっています。本稿では、中国、チベットにおける代表的な経録を時代順に概観し、その歴史的意義を解説します。

中国における経録

中国における経録の編纂は、仏教が中国に伝来した初期から行われていました。初期の経録は、既存の経典を網羅的に収録するものでしたが、時代が下るにつれて、新たな経典の翻訳や編纂、それに伴う経録の改訂が繰り返されました。

東晋時代: 道安による「綜理衆経目録」（道安録）は、現存しないものの、後の経録編纂に大きな影響を与えたとされています。

梁時代: 僧祐が編纂した「出三蔵記集」（僧祐録）は、当時の仏教経典の現状を詳細に記録した重要な資料です。

隋時代: 彦琮の「衆経目録」（彦琮録）や、「歴代三宝紀」（三宝紀）などが編纂され、経典の分類や整理が進みました。

唐・武周時代: この時代は経録編纂が盛んで、道宣による「大唐内典録」（内典録、道宣録）、「古今訳経図紀」、「大周刊定衆経目録」（武周録）、「開元釈教録」（開元録）、「貞元新定釈教目録」（貞元録）など、多くの経録が作成されました。これらは、唐代仏教の隆盛を反映しています。

五代時代: 「新集蔵経音義隨函録」（随函録）のような経録も編纂され、経典研究は継続的に発展しました。

元時代: 「至元法宝勘同総録」（至元録）は、元代の経典状況を示す貴重な資料です。

チベットにおける経録

チベットにおいても、独自の経録が編纂されました。

デンカルマ目録 (dkar chag ldan dkar ma)、パンタンマ目録 (dkar chag 'phang thang ma)などは、チベット仏教の経典を収録した重要な目録です。「チンプマ目録 (dkar chag bsam yas mchims phu ma)」は現存しません。

経録研究

経録は、仏教史、仏教思想史、仏教文化史の研究において重要な史料となっています。多くの研究者によって、経録の編纂史、内容、特徴などが研究され、仏教研究の発展に貢献しています。林屋友次郎、常盤大定、岡部和雄など、多くの研究者が経録研究に貢献しました。これらの研究は、経録の理解を深め、仏教史の解明に繋がるものです。

まとめ

経録は、仏教聖典の目録として、中国やチベットにおける仏教の歴史と発展を理解する上で不可欠な資料です。時代や地域によって異なる特徴を持つ経録を比較検討することで、仏教の伝播や発展の過程をより深く理解することができます。今後の研究においても、経録は重要な研究対象であり続けるでしょう。

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