常盤大定

常盤大定：仏教研究と文化交流に捧げた生涯

常盤大定（ときわ だいじょう、1870年5月8日 - 1945年5月5日）は、仏教研究者、浄土真宗大谷派の僧侶であり、「榴邱」という号でも知られています。彼の生涯は、仏教研究における卓越した業績と、日本と中国の文化交流への貢献によって特徴づけられます。

生い立ちと教育

1870年、常盤大定は磐城国伊具郡大張村（現在の宮城県丸森町）に、常盤大宣の次男として生まれました。生家は順忍寺という寺院でした。15歳で仙台新寺小路の道仁寺に入り、伯父である常盤了然の養子となります。小学校卒業を待たずして上京し、大谷教校に入学。大谷教校では漢籍が中心であったため、共立学校で英語も学びました。1889年には第一高等中学に進学し、さらに知識を深めます。

学究生活と研究活動

1895年、常盤大定は東京帝国大学文科大学哲学科に入学。井上哲次郎や元良勇次郎といった著名な学者から薫陶を受けましたが、特に影響を受けたのは、一高時代から徳風会を通じて交流のあった村上専精でした。1898年に大学を卒業後、真宗大谷派の講師となります。1907年からは東京帝国大学文学部の講師として印度哲学を担当し、1921年に文学博士号を取得。1925年には教授に昇格しました。1931年に東京帝国大学を定年退官した後は、東洋大学で教鞭を執りました。

東方文化学院東京研究所が開設されると、評議員として運営に携わる傍ら、自らも研究員として研究に従事しました。宗門においては、1939年より浅草本願寺の輪番、東京の宗務出張所長を務め、1942年までその任にありました。在任中には、1923年の関東大震災で焼失した浅草本願寺の堂宇再建が実現しました。1944年には、安藤正純の援助を受けて興亜佛教文化研究所を開設し、自ら所長に就任しました。

中国仏教史跡の研究

常盤大定の業績として特筆されるのは、1917年から1929年の間に五度にわたり中国に渡り、仏教、儒教、道教に関する文化史跡を踏査したことです。その成果は、関野貞との共著である『支那仏教史蹟』『支那文化史蹟』として結実しました。これらの著作は、中国仏教史研究における重要な資料となっています。

中国渡航の記録

第1回：房山、雲岡、正定、天龍山、龍山、龍門、漢陽、玉泉山、盾山、南京、宝華山、杭州
第2回：済南、泰山、開封、洛陽、龍門、嵩山、帰徳、宝山、南岳、漁山、南京、楊州、茅山
第3回：天台山、普陀山、寧波、響堂山、洛陽、誰県、順山、四祖山、楊州、杭州
第4回：山東省各地
第5回：広州、詔州、雲門山、潮州、原門、福州、黄檗山

晩年と死

1945年2月、常盤大定は仙台へ帰郷し、同年5月8日に自坊である道仁寺にて生涯を閉じました。彼の墓碑は道仁寺の境内にあり、その碑文は塩谷温によって撰されました。

門下生

結城令聞：東方文化学院東京研究所の第1期研究員として推薦。
横超慧日

主な著作

『支那仏教史蹟』関野貞共著 仏教史蹟研究会 1925-1926
『仏教要典』編 博文館 1933
『支那文化史蹟』第1至12 関野貞共編 法蔵館 1939-1941
改題『中国文化史蹟』法蔵館、1975
『国訳大蔵経 経部 第10巻 過去現在因果経・仏本行集経、第11巻 仏本行集経』国民文庫刊行会 1917-1918

常盤大定は、仏教研究者としてだけでなく、教育者、文化交流の担い手として、多岐にわたる分野で足跡を残しました。彼の研究成果は、今日においても貴重な資料として活用されています。

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