絵本小夜時雨

絵本小夜時雨（えほんさよしぐれ）

江戸時代に出版された「小夜時雨」は、絵本読本の一つであり、全5巻から構成されています。この絵本は、1801年に速水春暁斎によって作成されました。彼自身が作・画を手がけており、ユニークで魅力的な内容が特徴的です。絵本は、古典的な軍記物語や説話集を基にしており、さまざまな物語が収録されています。

収録されている物語の内容

「小夜時雨」には、「太平記」、「平家物語」、「武将感状記」などの歴史的な軍記物語や、名高い説話集である「今昔物語集」、「翁草」から取材された話が含まれています。これらの物語は、武士たちの行動や神仏の霊験、妖怪退治、さらには亡霊や仙人、幻術使い、忍者といった多彩なキャラクターに焦点を当てています。そして各物語には春暁斎が描いた美しい絵が添えられ、視覚的にも楽しむことができます。

特筆すべきは、伝承された昔の説話だけでなく、1798年に実際に起こった京の大仏の落雷による焼失にまつわる「樹木仏像に見ゆ」といった近代の話も取り入れられている点です。このように、古典と現代が交わることで、読者に新たな視点を提供しています。

時代設定の工夫

また、「小夜時雨」の物語の中には、「今昔物語集」からの話を時代設定を変更して描く工夫も見られます。例えば、室町時代に設定された物語が多く、物語の主人公が赤松則祐の家臣となるなど、改編が行われています。これにより、古い物語が新たな形で語り継がれ、魅力を増しています。

翻刻と評価

「小夜時雨」の挿画は、江馬務の『日本妖怪変化史』や粕三平の『お化け図絵』といった他の著作でも取り上げられ、多くの読者に紹介されています。さらに、2002年には近藤瑞木の『百鬼繚乱 江戸怪談・妖怪絵本集成』に全文が翻刻され、江戸時代における妖怪や怪談の文化を理解するための貴重な資料となりました。

また、漫画家の水木しげるも1980年前後から「小夜時雨」を参考文献の一つとして挙げており、彼の作品においても本書からの故事やエピソードが数多く引用されています。特に「浪速東堀に異魚を釣る」や「山室氏鬼の為に妾を拘」、「樹木仏像に見ゆ」、「泉縄手の陰火」などが紹介され、江戸時代の妖怪文化を現代に伝えているのです。

結論

「小夜時雨」はその多様な物語と美しい挿絵によって江戸時代の文化を色濃く反映し、読者に深い印象を与える作品です。この絵本は、古典文学の魅力を味わえる貴重な一冊であり、今日においてもその価値は失われていません。

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