総肝動脈

総肝動脈

総肝動脈（そうかんどうみゃく、英語: common hepatic artery）は、人体の腹部において、消化器系の広範な臓器に血液を供給する重要な動脈の一つです。

解剖学的位置づけ

この動脈は、腹部大動脈から直接分岐する大きな血管である腹腔動脈から派生しています。腹腔動脈は、胃や脾臓、肝臓といった上腹部の主要な消化器臓器への血流を供給する根幹となる血管であり、総肝動脈はその最初の重要な分枝として位置づけられます。

供給対象となる臓器

総肝動脈は、その名の通り肝臓への血流供給に関わる一方で、実際には肝臓以外の複数の臓器にも血液を供給しています。主な供給対象は以下の通りです。

肝臓: 人体最大の臓器であり、代謝、解毒、胆汁生成など、生命維持に不可欠な多岐にわたる生理機能を担っています。総肝動脈からの血流は、肝臓の活発な細胞活動を支えるために極めて重要です。
胃の幽門部: 胃の出口にあたる部分で、消化された食物を小腸である十二指腸へ少量ずつ送り出す役割を担っています。この調節機能を持つ部位の筋肉や粘膜組織には、継続的な血流が必要です。
十二指腸: 小腸の最初の部分であり、胃から送られてきた食物に対する本格的な消化と栄養素の吸収が開始される場所です。膵臓から分泌される消化酵素や、肝臓・胆嚢から送られる胆汁がここで混ざり合い、複雑な化学反応が進みます。この消化プロセスを円滑に行うためには、十分な血流が供給される必要があります。
膵臓: 消化酵素を生成して小腸へ分泌する外分泌機能と、インスリンなどのホルモンを生成して血液中に放出する内分泌機能という、二つの重要な役割を持つ臓器です。総肝動脈からの血流は、これらの複雑な機能の維持に不可欠です。
* 胆嚢: 肝臓で生成された胆汁を一時的に貯蔵し、濃縮する機能を持つ小さな臓器です。食物が十二指腸に到達した際に、胆嚢から胆汁が放出され、脂肪の消化を助けます。胆汁の貯蔵と放出という機能には、継続的な血流供給が求められます。

機能と臨床的意義

総肝動脈が供給する血液は、細胞の活動に必要な酸素を豊富に含んだ動脈血です。この高酸素濃度の血液供給によって、前述の各臓器は、それぞれの生理機能を滞りなく遂行することができます。消化、吸収、代謝、内分泌といった一連の重要な生命活動は、総肝動脈によってもたらされる安定した血流によって支えられています。

腹腔動脈から分岐した後、総肝動脈はさらにいくつかの主要な血管へと枝分かれしていきます。これらの分枝血管が、最終的に各臓器の微細な血管網へと繋がり、組織レベルでの血流供給を行います。したがって、総肝動脈における血流障害は、広範な消化器系臓器の機能に影響を及ぼし、様々な病態を引き起こす可能性があります。その存在は短い血管ながら、消化器系の健康維持にとって極めて重要な役割を担っているのです。

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