縫殿寮

縫殿寮の歴史と役割

縫殿寮（ぬいどのりょう）は、律令制度における重要な機関であり、中務省の管轄下で女官の人事や衣服の製作を担当していました。もともとこの機関は、内蔵衣縫造（きぬぬいのみやつこ）という名で知られており、その根底には古代の皇室の倉庫である「内蔵」がありました。縫殿寮は、その設立当初から皇室の家政機関としての役割が強く、国家そのものの管理機関としての側面は比較的薄かったとされます。

縫殿寮の職掌と沿革

縫殿寮の主な職務は、宮中で使用する衣服の製造を監督し、後宮に所属する女官の人事を管理することでした。奈良時代の初期、衣服の製作は主に後宮の縫司によって行われていましたが、平安時代に入ると大同3年（808年）に大蔵省の縫部司を併合し、自ら衣服の生産を行うようになります。この変革により、縫殿寮の役割は翅を広げ、より多くの衣服の製作を行うようになりました。なお、縫部司の前身は官人の衣服製作を主な職務としていたため、縫殿寮の家政機関としての色合いが徐々に薄れていったと考えられます。

また、11世紀後半には天皇の衣服を専門に製作する「御服所」が設立され、これにより縫殿寮は次第にその機能を失っていきます。貴族や院にも同じような機関が設けられたことから、縫殿寮は次第に名目的な存在へと転変していくことになります。

縫司について

縫司（ぬいのつかさ）は、後宮における重要な職員の一人として捉えられており、令義解第6巻にはその職務が記されています。この職務には、衣服の裁縫や紐の加工、「女功」と「朝参」に関する業務を担う役割が含まれ、その他に「典縫」という名の二名が同じくその職務を行っていました。また、掌縫と呼ばれる役職が四人配置されており、彼らは命婦の朝会を執り行う役割も果たしていたのです。

糸所とその役割

9世紀の後半、縫殿寮内に新たに設置された糸所は、主に糸を紡ぐ業務を担当していました。この糸所では多くの女官が働いており、縫殿寮の生産活動に貢献していました。糸所の存在は、縫殿寮の多様な業務の一環として、皇宮の衣服生産における重要な支えとなっていたのです。

職員の構成

縫殿寮の職員構成は次のようになっています：

• - 頭（従五位下相当）：一名
• - 助（従六位上相当）：一名
• - 允（従七位上相当）：一名（後に大允と少允に分かれる）
• - 大属（従八位下相当）：一名
• - 少属（大初位上相当）：一名
• - 史生：新設
• - 寮掌：新設
• - 使部、直丁、染師：新設、後に808年（大同3年）に廃止
• - 縫部、染手：縫部司より移管

また、糸所には一名の預、官人代一名、女孺、刀自といった職位が設けられ、多くの人々がこの機関に関与していました。これらの人々の協力によって、縫殿寮は皇室に奉仕し、文化と技術の保存に大きく寄与していたのです。

関連事項

縫殿寮は日本の官制や後宮における重要な機関であると同時に、富岡製糸場や愛知紡績所、新町紡績所などの官営模範工場とも関連しています。このように、歴史を通じて縫殿寮は日本の衣服文化や社会の発展において重要な役割を果たしてきたと言えます。

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