織田萬

織田萬：日本の法学界に輝く生涯

織田萬（おだよろず、1868年8月21日-1945年5月26日）は、日本の法学史にその名を刻む著名な行政法学者です。京都帝国大学名誉教授、常設国際司法裁判所判事、関西大学学長、そして立命館名誉総長という輝かしい経歴は、彼の卓越した能力と多岐にわたる活躍を物語っています。

幼少期から芽生えた才能

佐賀県須古邑（現在の白石町）の士族の家に生まれた織田は、幼少期から並外れた学習意欲と能力を示しました。1歳の時に養子として織田家に迎えられ、そこで教育を受けました。その後、地元の私塾「鶴陰学舎」で漢籍や外国の法律書を学び、自由民権運動の気風にも早くから触れる機会を得ました。「鶴陰学舎」への深い愛情は、のちに彼自身の号に「鶴陰」を用いることからも伺えます。

法曹界への道

1883年、織田は司法省法学校入学を目指して上京、翌年には狭き門を突破し予科に入学します。同校では、後に総理大臣となる若槻禮次郎ら多くの著名な人物と同期でした。司法省法学校から第一高等中学校予科を経て、帝国大学（現在の東京大学）法科大学に進学。フランス法を学ぶ中で、専門分野である行政法への関心を深めていきました。大学院では穂積八束に師事し、行政法の研究に没頭しました。

教育者としての貢献

卒業後は、東京専門学校（現早稲田大学）、日本法律学校（現日本大学）、和仏法律学校（現法政大学）などで講師を務め、1895年には『日本行政法論』を著しました。この著作は、彼を西園寺公望などの有力者と結びつけるきっかけとなり、1896年から4年間のヨーロッパ留学へと繋がります。留学中は主にフランスで過ごし、法学研究を深めました。帰国後は京都帝国大学教授に就任し、行政法を講義。同時に、関西法律学校（現在の関西大学法学部）や、中川小十郎が設立した京都法政学校（現在の立命館大学）でも教鞭を執るなど、教育者としても多大な貢献をしました。1914年には立命館大学教頭、1918年には関西大学学長に就任しています。

国際舞台での活躍

1921年、織田は日本人として初めて常設国際司法裁判所判事に選出されました。当初は他の候補が挙がっていましたが、健康上の理由で辞退したため、中国法に精通していた織田がその座に就いたのです。国際司法裁判所判事としての任期中は、ヴェルサイユ条約関連の紛争処理などに携わり、ハーグに常駐しました。

立命館大学との深い繋がり

織田は、帝国大学時代の同級生である中川小十郎が創設した立命館大学とも深い繋がりを持っていました。1931年には財団法人立命館の名誉総長に就任し、1936年には学長事務取扱に就任するなど、学園の発展に大きく貢献しました。特に「立命館」の名称の解釈をめぐって、中川と意見を異にすることもありましたが、織田の解釈が現在の立命館大学の解釈に大きな影響を与えていると言われています。また、学長交代問題においても、中川小十郎との深い信頼関係を活かし、学園運営に大きな影響力を及ぼしました。

多彩な業績

織田は、行政法に関する多くの著作を発表しており、それらは今日でも高く評価されています。また、1931年には貴族院議員に勅選され、勲一等瑞宝章を受章しました。1945年、東京大空襲で戦死しました。

織田萬の生涯は、法学者として、教育者として、そして国際的な舞台で活躍した稀有な人物像を示しています。彼の功績は、日本の法学界のみならず、教育界、国際社会にまで大きな影響を与え続け、現在も高く評価されています。

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