羅秉忠

羅秉忠（ら へいちゅう）

羅秉忠（生年不詳 - 1480年）は、明代中期の武将です。元の名は克羅俄領占（クロオ ロウセン）といい、沙州衛の出身でした。彼の生涯は、明朝の動乱期と深く関わり、その軍事的な活躍と、政治的な波乱に満ちたものでした。

生い立ちと初期のキャリア

羅秉忠は、沙州衛都督僉事であったコンジライ（困即来）の末子として生まれました。1444年、父の死後、兄の喃哥（ナンコ）が父の職を継ぎ、克羅俄領占は指揮使として沙州衛の事務を共同で管理することになりました。1447年、兄の喃哥は英宗の命により、1200人を率いて内地の東昌衛と平山衛に移住しました。しかし、その年の11月、喃哥が亡くなると、克羅俄領占は都指揮使となり、兄の部隊を引き継ぎました。この時期、彼は部隊を統率する能力を養い、後の活躍への足がかりを築きました。

土木の変と南征

1449年、明朝は土木の変で英宗がオイラト軍に捕らえられるという未曾有の危機に見舞われました。この混乱に乗じて降伏した兵士たちが反乱を起こすことを恐れた朝廷は、彼らを南方に移す計画を立てました。その頃、貴州では苗族の反乱が発生しており、都督の毛福寿が鎮圧のために派遣されました。克羅俄領占は都督僉事に抜擢され、自らの部隊を率いて反乱鎮圧に参加し、数々の戦功を挙げました。その功績が認められ、左都督に昇進しました。この南征での活躍は、彼の軍事的な才能を示すものであり、後の昇進につながりました。

羅秉忠への改名と曹欽の乱

1457年、克羅俄領占は羅秉忠という名前を賜りました。これは、彼が明朝に忠誠を誓い、正式な官僚としての地位を確立したことを意味します。しかし、1461年に曹欽が反乱を起こすと、多くの非漢民族の官僚が彼に従いました。羅秉忠もその一人として反乱に加担してしまい、捕らえられ、家産を没収されました。この事件は、彼のキャリアにおける大きな転換点となりました。彼は投獄されてしまいましたが、その後、1463年に自ら弁明する文章を提出し、釈放されました。この釈放は、彼の弁明が認められただけでなく、彼の軍事的な能力が依然として必要とされていたことを示唆しています。

少数民族の乱と晩年

1467年、兵部尚書の程信が山都掌の少数民族の反乱を鎮圧することになると、羅秉忠は游撃将軍として従軍しました。程信の軍が永寧に到着すると、兵を六道に分けて進軍させました。羅秉忠は金鵝江から進み、反乱軍を打ち破るという活躍を見せました。この戦功により、1468年8月には順義伯に封じられました。彼は、この地位を得たことで、明朝の貴族としての地位を確立しました。1480年2月、羅秉忠は亡くなりました。諡は栄壮といいます。彼の死後も、子孫は指揮使の職を世襲し、その家系は続いていきました。

羅秉忠の生涯は、明代の動乱期を生き抜いた武将の典型的な例といえるでしょう。彼は、自身の出自や民族的な背景、時代の変化に翻弄されながらも、その軍事的な才能と政治的な手腕によって、明朝に貢献しました。彼の人生は、明代の歴史を語る上で欠かせないものとなっています。

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