羊膜

羊膜（Amnion）

羊膜とは、脊椎動物（爬虫類、鳥類、哺乳類）の発生過程において形成される、胎児と羊水を包む胚膜の一つです。漿膜とともに胎児を包みますが、直接胎児を包むのは羊膜です。その起源は外胚葉にあります。

羊膜の構造と機能

羊膜の内側の空洞は羊膜腔と呼ばれ、羊水で満たされています。羊水は、胎児と羊膜の癒着を防ぎ、胎児の自由な運動を可能にする重要な役割を果たします。分娩時には破水が起こり、胎児の娩出を助ける働きも担っています。

ヒトの羊膜

ヒトの羊膜は、子宮と胎盤の最内層を覆う半透明で薄い膜（約100 - 150マイクロメートル）であり、胎盤の胎児側と臍帯の外周を包み込んでいます。組織構造としては、羊膜上皮組織、その下の基底膜、そしてコラーゲンを豊富に含む無血管性の実質（間質）組織から構成されています。

幸帽児（被膜児）

まれに、大網膜と共に羊膜に包まれた状態で生まれてくる子供がいます。これは「幸帽児」または「被膜児」と呼ばれ、早産の場合によく見られます。

医療への応用

羊膜は、非常に薄く透明でありながら、柔軟性と強度を兼ね備えています。さらに、母体と胎児という異なる個体の間に位置するという特性から、免疫学的な拒絶反応が起こりにくいという利点があります（MHC Class II 陰性、MHC Class I 弱陽性）。また、抗炎症作用や創傷治癒促進作用も有することが知られています。

これらの特性から、羊膜は様々な医療分野で応用されています。例えば、皮膚熱傷後の被覆材、臍ヘルニアの修復、人工膣の作成、腹部手術後の癒着防止などに用いられています。近年では、再生医療の分野でも注目されており、角膜、食道、気管、血管、皮膚、鼓膜などの再生に羊膜が利用されています。特に、難治性の眼表面疾患に対する角膜移植においては、移植の際の基質として羊膜が用いられ、良好な治療成績を上げています。

参考文献

日本獣医解剖学会 編『獣医組織学』（改訂第2版）学窓社、2003年。ISBN 4-87362-113-5。

関連項目

有羊膜類
双弓類
卵白
胎盤

外部リンク

羊膜 - e-妊娠 妊娠用語辞典 (2007年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年12月26日閲覧)

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