美味礼讃

美味礼讃: 食の哲学を探求する名著

美味礼讃（びみらいさん）は、フランスの美食家であり政治家であったジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランが1825年に発表した著作『Physiologie du Goût（味覚の生理学）』の日本語訳で、この本は以降、美食についての著作物の中でよく見られるタイトルとして定着しています。

本書の内容と背景

原題のフルタイトルは『Physiologie du Goût, ou Méditations de Gastronomie Transcendante; ouvrage théorique, historique et à l'ordre du jour, dédié aux Gastronomes parisiens, par un Professeur, membre de plusieurs sociétés littéraires et savantes』で、これは「味覚の生理学、あるいは超越的美食学を巡る瞑想録；理論的、歴史的な著述であり、当代の食通たちに捧げられたもの」という意味です。この著作は、美食に対する単なる案内やレシピ集ではなく、食事や味覚に関連した事柄を深く考察する随筆集です。

著者のブリア=サヴァランは、食を愛する人々へのメッセージとして、食の奥深さだけでなく、それが人生において持つ意味を探求します。彼は、食事が文化や人間の在り方にどのように結びついているのかを考え、哲学や文学を借りて、自身の経験と知識を基にしたアプローチを行っています。

日本語訳と関連作品

日本語訳は、関根秀雄によって1953年に創元社から発行され、その後も白水社や岩波文庫などから多くの版がリリースされました。特に関根氏の訳は広く受け入れられており、1967年には岩波文庫から上下巻が出版されています。さらに、玉村豊男による最新の編訳も2017年に発表され、食に対する新しい視点が提供されています。

また、美味礼讃に関連する著作も多数存在します。辻静雄による『ブリア-サヴァラン「美味礼讃」を読む』や、自身の半生を描いた『美味礼讃 辻静雄の半生』などは、著者の影響と美食文化の発展を理解するのに欠かせない一冊です。辻静雄は辻調理師学校の創始者でもあり、彼の経験を通じて、料理の素晴らしさが描かれています。

ロラン・バルトによる『<味覚の生理学>を読む 付・ブリヤ=サヴァラン抄』や、大木吉甫の『美食随想 ブリヤ=サヴァランに捧ぐ』も、ブリア=サヴァランの思想に対する重要な考察を提供しています。

美味とは何か

美味礼讃は単に食べ物の味を称賛するだけでなく、味覚が人間の文化や社会に与える影響についても考察します。ブリア=サヴァランは、食がどのように感情や記憶と結びつくのか、またその経験が他の人々とどのように共有されるのかを探求しました。これにより、料理と食事はただの栄養摂取の手段ではなく、人々を結びつける重要な文化的象徴にもなるというメッセージが伝えられます。

結論

美味礼讃は、料理や食べ物に対する視点を豊かにし、単なる食事そのものを超えた深い考察によって、多くの人々にとっての美食の意味を再考させるきっかけを与える作品です。この名著は、料理に対する愛情や理解を深め、更なる美食の探求へと導いてくれるでしょう。

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