美和神社 (笛吹市)

美和神社の歴史と文化

美和神社は、山梨県笛吹市に位置する、古くから信仰を集めてきた神社です。国史見在社、甲斐国二宮としての格式を持ち、旧社格は県社でした。祭神は大物主命で、その歴史と文化は深く、多くの人々を魅了しています。

立地と古代

美和神社は甲府盆地の東部に位置し、二ノ宮地区に鎮座しています。この地域は古代甲斐国において、政治の中心であった国府が置かれた場所に近いと考えられています。周辺には古墳時代からの遺跡も多く、古代からこの地が重要な場所であったことが窺えます。律令制下では山梨郡井上郷に比定され、「二ノ宮」という地名は、国衙に近接していた美和神社に由来するとされています。近世には二ノ宮村が成立し、美和神社が地域の中核を担っていました。

歴史

美和神社の起源は、大和国の大神神社から勧請されたという伝承が一般的です。景行天皇の時代に甲斐国造の塩海足尼が勧請したとされ、当初は杵衡神社に遷座した後、現在の二ノ宮に遷されたと伝えられています。美和神社の名が史料に初めて現れるのは『日本三代実録』で、863年に従五位に叙せられています。一条天皇からは二宮の号を賜りました。

中世には、甲斐守護の武田氏からの崇敬を受けました。1479年には、信濃国佐久郡領主の大井氏による侵攻で戦火に見舞われることもありました。武田信虎の時代には社領を寄進され、武田晴信（信玄）からは特権を与えられました。1565年には、武田義信家臣による太刀奉納が行われた記録が残っています。義信事件に関わる記録も残っており、武田氏と美和神社の関わりを知る上で重要な資料です。武田氏滅亡後は、織田信長や徳川家康からも保護され、社領を安堵されました。

神事

美和神社では、戦国時代から近世にかけて、一宮と三宮との三社共同で、信玄堤での水防祈念を行う「三社御幸」が義務付けられていました。この行事は、夏と冬に行われましたが、明治時代に禁止されました。その後、4月15日に「山宮御幸」が春季例祭として行われるようになりました。現在では4月第一日曜に行われ、太々神楽が奉納されています。

また、毎年2月8日には湯立神事が行われます。この湯立神事は、猿田彦の祈祷舞を伴う、県内で現存する唯一のものです。

文化財

美和神社には、数々の貴重な文化財が所蔵されています。

国指定重要文化財
木造大物主神立像: 平安時代の作品で、1906年に指定されました。

山梨県指定有形文化財
白糸威褄取鎧〈残欠〉: 南北朝時代の作品で、1986年に指定されました。
朱札紅糸素懸威胴丸 佩楯付: 伝・武田信玄の元服鎧で、1986年に指定されました。
板絵著色三十六歌仙図: 1563年に武田信玄・義信父子が連名で寄進したもので、1965年に指定されました。

山梨県指定無形民俗文化財
* 二ノ宮美和神社の太々神楽 付版木1枚、神楽二十五番次第1枚: 元禄年間に始まったとされ、1981年に指定されました。

その他にも、神主である坂名井家に伝わる坂名井家文書が、山梨県立博物館に収蔵されています。

天正年中二宮祭礼帳

美和神社には、戦国時代の祭礼の様子を記録した『天正年中二宮祭礼帳』が伝来しています。この祭礼帳には、当時の神事の日付や内容、費用などが詳細に記されており、戦国時代の神事の実態を知る上で貴重な資料です。また、中世甲斐国における海産物の利用状況も記録されており、当時の生活を知る上でも重要な資料です。

美和神社の太々神楽

春期例祭では、氏子により太々神楽が奉納されます。演目は、素面や着面、一人舞や複数での舞、物語性のあるものなど多様です。現在では、二十種の演目が伝えられています。神楽は、御輿が杵衡神社で神事を終えて帰還するまで続けられます。美和神社の神楽は、江戸中期に再興されたもので、伊勢系の古い次第を多く含んでいるとされています。

美和神社は、その歴史と文化を通して、今もなお地域の人々の心の拠り所となっています。

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