美恵橋

美恵橋（みえばし）

岐阜県中津川市に位置する美恵橋は、同市の苗木地区と駒場地区を結ぶ、岐阜県道410号苗木恵那線の一部を構成する重要な橋梁です。全長212メートルに及ぶこの橋は、木曽川の恵那峡と呼ばれる峡谷部に架かっており、特に下流の大井ダムの影響で広い川幅を持つ地点に位置しています。現在の橋は4代目にあたり、その独特なバスケットハンドル型の上路ローゼ橋という形式は、周囲の景観とも調和しています。

現在の美恵橋の概要と特徴

現在の美恵橋が位置するのは、木曽川が長い年月をかけて浸食してできた恵那峡の峡谷部です。下流にある大井ダムの影響もあり、この地点での川幅は約150メートルと広く、厳しい自然環境下にあります。

現在の4代目美恵橋は、主部が鋼上路ローゼ橋、その他が鋼単純合成鈑桁橋という複合形式を採用しています。設計においては、放物線状のアーチリブによりアーチの水平変位を抑え、バスケットハンドル型の形状で面外剛性を向上させています。また、施工性を考慮し、アーチリブのヒンジ位置を水平に配置しています。

建設当初、幅1.5メートルの歩道増設が想定されていましたが、バリアフリー化や交通量増加のため、最終的に幅2.0メートルへの拡幅が実施されました。この工事では、ローゼ桁部には張り出し式の歩道、合成桁部には単独の歩道橋が添架され、上流・下流側に斜材が追加されるなど、大規模な改修が行われました。工事は交通規制を伴いながら進められました。

現在の橋の主な仕様は以下の通りです。
形式: 鋼上路ローゼ橋 + 鋼単純合成鈑桁橋
橋格: 1等橋 (TL-20)
道路規格: 第3種第4級
設計速度: 40 km/h
橋長: 212.000 m
支間割: (24.400 m + 150.000 m) + 36.600 m
アーチライズ: 26.560 m
幅員: 総幅員 10.100 m / 有効幅員 8.500 m (車道 6.500 m / 歩道 片側 2.000 m)
総鋼重: 752.796 t
床版: 鉄筋コンクリート
施工: 川田工業
架設工法: ケーブルエレクション斜吊り工法

美恵橋の歴史：架橋への道のりと度重なる流失

この地に初めて橋が架かるまで、人々は木曽川の渡船に頼っていました。1881年（明治14年）、旧苗木藩士の鈴木三蔵は、博覧会で吊橋模型を見たことに触発され、私財を投じて架橋運動を開始します。彼の熱意と地域住民の協力により資金が集まり、1895年（明治28年）に着工、1898年（明治30年）に初代美恵橋が完成しました。しかし、1914年（大正3年）の洪水でこの初代橋は流失してしまいます。

初代流失後、一時的に渡船に戻った後、1923年（大正12年）に2代目の橋が架橋されました。これはRC主塔鉄補剛吊橋でしたが、1958年（昭和33年）の洪水により再び流失。

度重なる災害を受けながらも、1961年（昭和36年）8月には3代目の橋が完成しました。トラス補剛吊橋で、技術的な工夫も凝らされていましたが、これもまた1983年（昭和58年）9月の洪水で流失するという悲劇に見舞われます。

3代目橋の流失という事態を受け、橋梁災害関連事業として現在の4代目美恵橋の再建が計画されました。岐阜県恵那土木事務所を事業主体として、最新の技術と過去の災害経験を活かして建設が進められ、1986年（昭和61年）1月に完成したのが現在の橋です。その後、利用者の増加やバリアフリー化に対応するため、歩道が拡幅されるなどの改良が加えられ、現在に至ります。

美恵橋の歴史は、自然災害に屈することなく、より安全で強靭な橋を求める地域の人々の強い意志と、技術の進歩の軌跡を物語っています。現在の美恵橋は、過去の経験の上に築かれた、地域にとってなくてはならない生命線となっています。

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