美濃口武雄

美濃口 武雄（みのぐち たけお）

美濃口武雄氏は、1937年7月26日に東京都中野区へ生を受けた、日本の著名な経済学史学者です。父は美濃口時次郎氏。特に近代経済学の歴史と発展に関する研究で知られ、一橋大学名誉教授の地位にありました。2021年8月28日に84歳で逝去されるまで、長年にわたり日本の経済学界に貢献しました。

学歴とキャリア

美濃口氏は成蹊中学校・高等学校を経て、一橋大学経済学部に進学。1962年に同大学を卒業し、中山伊知郎氏のゼミで学問の基礎を固めました。その後、大学院に進み、博士課程で荒憲治郎氏に師事。1967年に単位取得退学しました。大学院修了後、一橋大学経済学部の専任講師に就任し、研究者としてのキャリアをスタートさせました。

1969年にはブリティッシュ・カウンシル・スカラーとしてイギリスのオックスフォード大学に留学。国際的な視野を広げ、研究を深めました。帰国後、1971年に助教授に昇任し、1978年には経済学部教授となりました。一橋大学では、経済学史を中心に教鞭を執り、多くの学生を指導しました。

2001年に一橋大学を定年退職し、名誉教授の称号を得ました。大学を退いた後も、研究・教育活動への情熱は衰えることなく、関東学院大学の教授を務めたほか、富士大学大学院では初代研究科長として、大学院教育の創設と発展に尽力しました。

研究と業績

美濃口氏の研究は、特に近代経済学の生成から発展に至る過程に焦点が当てられていました。経済学の古典から現代までの学説を深く掘り下げ、その歴史的背景や思想的流れを明らかにする研究は、日本の経済学史研究において重要な位置を占めています。教育者としても優れ、後進の指導に熱心でした。氏の門下からは、蜂谷豊彦（一橋大学教授）、池尾愛子（早稲田大学教授）、小峯敦（法政大学教授）といった学界で活躍する研究者のほか、元テレビ朝日アナウンサーの大熊英司氏など、多様な分野で活躍する人材が輩出されています。

主な著作

美濃口氏は多くの学術書や教科書を執筆、編纂、翻訳しています。主な著作としては、経済学史の標準的なテキストとして広く読まれた『経済学史 近代経済学の生成と発展』や、『経済学説史』、『近代経済学入門』などがあります。これらの著作は、複雑な経済学の思想を分かりやすく解説し、多くの学生や研究者に影響を与えました。また、『経済学概論 現代の日本経済と経済学』や、『経済学説史 イギリスの経済と経済学の歴史』といった経済学基礎シリーズの執筆にも携わっています。共編書には早坂忠氏と共に手掛けた『近代経済学と日本』があり、さらにA.W.ストーニャー、D.C.ヘイグ共著の『経済学テキストブック』の翻訳も行っています。

受章と晩年

長年にわたる学術研究と教育への貢献が認められ、2017年4月29日には瑞宝中綬章を受章しました。晩年は肺炎を患い、2021年8月28日に84歳で逝去。その学問的功績と社会への貢献に対し、逝去日付をもって政府より正四位が追贈され、改めてその生涯が称えられました。美濃口武雄氏の研究と思想は、今なお多くの研究者や学生に引き継がれています。

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