荒憲治郎

荒 憲治郎

荒 憲治郎（あら けんじろう、1925年11月25日 - 2002年11月10日）は、日本の高名な経済学者です。享年76歳。一橋大学名誉教授の称号を授与され、特にマクロ経済学の分野で顕著な業績を残しました。その学術的系譜は中山伊知郎氏に連なります。

来歴と学歴

荒氏は1925年、北海道旭川市に生を受けました。地元の教育機関である北海道庁立旭川商業学校（現在の北海道旭川商業高等学校）を卒業後、1945年に小樽経済専門学校（現在の小樽商科大学）を修了します。さらに学問を深めるため、1949年には東京商科大学（現在の一橋大学）本科を卒業しました。

経済学者としての活動

大学卒業後、荒氏は学術研究の道に進みます。1958年には母校である一橋大学経済学部の助教授に着任し、1965年には同大学の教授に昇進しました。一橋大学において長年にわたり教鞭を執り、経済学の研究・教育に貢献しました。専門分野であるマクロ経済学における理論的探求を深め、日本の経済学界において重要な位置を占めました。また、1974年から1975年にかけては、日本経済学会の会長を務め、学会の発展にも尽力しました。

1989年に一橋大学を定年により退官し、名誉教授の称号が贈られました。その後は、1990年から駿河台大学経済学部の教授として教壇に立ち、同大学の理事も兼任しました。

教育者として

荒氏は教育者としても非常に熱心であり、後進の育成に力を注ぎました。特筆すべきは、皇太子（現在の天皇陛下）徳仁親王の学生時代に個人教授を務めた経験を持つことです。

荒氏が主宰した「荒ゼミナール」からは、学界、政界、実業界など多岐にわたる分野で活躍する多くの人材が輩出されました。主な門下生としては以下の人物が挙げられます。

時子山和彦（元一橋大学教授）
鈴村興太郎（一橋大学名誉教授、文化功労者、日本学士院会員、元日本経済学会会長、紫綬褒章受章者、日本学士院賞受賞者）
美濃口武雄（一橋大学名誉教授）
伊藤隆敏（一橋大学名誉教授、東京大学名誉教授、元日本経済学会会長、紫綬褒章受章者、コロンビア大学教授）
矢吹雄平（元岡山大学教授）
高橋はるみ（北海道知事）
新田八朗（富山県知事）
金田勝年（法務大臣、外務副大臣）
枝廣直幹（福山市長）
田中正昭（元東京国税局長）
吹野博志（元デルコンピュータ会長）
西條辰義（元一橋大学教授）
山﨑和之（国連大使、元外務審議官）
浅田統一郎（中央大学教授）
戸田学（早稲田大学教授）
鴇田忠彦（東京都立大学名誉教授）
田村紀之（東京都立大学名誉教授）
楠本捷一朗（筑波大学名誉教授）
篠塚友一（筑波大学教授）
皆川正（名古屋大学名誉教授）
武隈慎一（一橋大学名誉教授）
山崎昭（一橋大学名誉教授）
丸山雅祥（神戸大学名誉教授）
小栗誠治(滋賀大学名誉教授)
杉田定大（元経済産業省大臣官房審議官、元東京工業大学特任教授）
矢野康治（元財務事務次官）
瀧本徹（元観光庁観光地域振興部長）

主な著作

荒氏は多くの学術書や論文を執筆し、経済学の発展に貢献しました。また、逝去するまで「現代用語の基礎知識」の経済欄を監修するなど、一般向けの情報発信にも関わりました。主要な著作は以下の通りです。

単著

『経済成長論』（岩波書店、1969年）
『マクロ経済学講義』（創文社、1985年）
『資本理論の研究』（有斐閣、1987年）

共著

『経済学入門』（飯田経夫・大石泰彦・大野忠男と共著、有斐閣［有斐閣新書］、1978年／新版、1990年）

編著

『インフレーションと物価政策』（日本経済新聞社、1976年）

共編著

『日本の国富構造』（吉植悟・和泉伝蔵と共編、東洋経済新報社、1959年）
『経済学』（福岡正夫と共編、有斐閣、1965年）
『有斐閣経済辞典』（中山伊知郎・金森久雄と共編、有斐閣、1971年／新版、1986年）
『原典による経済学の歩み』（中山伊知郎・宮沢健一と共編、講談社、1974年）
『経済学用語の基礎知識――正確な理解と整理のために』（種瀬茂と共編、有斐閣、1974年／増補版、1981年）
『戦後経済政策論の争点――篠原三代平博士還暦記念論文集』（伊藤善市・倉林義正・佐藤隆三・宮沢健一と共編、勁草書房、1980年）
* 『経済辞典』（内田忠夫・福岡正夫と共編、講談社、1980年）

晩年

2002年11月10日、東京都武蔵野市の病院で逝去しました。享年76歳でした。その功績に対し、没後には従三位に叙され、勲三等旭日中綬章が追贈されました。

荒憲治郎氏は、マクロ経済学の研究における貢献、日本経済学会会長としてのリーダーシップ、そして皇太子殿下の個人教授や多くの著名な門下生を育成した教育者としての側面から、日本の経済学界に大きな足跡を残しました。

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