美術学校騒動

美術学校騒動について

美術学校騒動は、1898年に発生した重要な歴史的な出来事で、特に日本の美術界において大きな影響を及ぼしました。この騒動は、当時の東京美術学校の校長であった岡倉天心が、帝室博物館での美術部長の職を辞任することに起因しています。実際には、これに関与するさまざまな要因があり、事件は数多くの関係者を巻き込む形で進行しました。

この事件の発端は、帝国博物館館長である九鬼隆一の更迭の噂が広がったことにあります。不仲となっていた岡倉天心と九鬼の関係を考慮すると、福地復一という東京美術学校の図案科の教師が、オカクラの辞任を条件に九鬼の留任運動を促進しようとしたところから、一連の騒動が始まりました。九鬼自身も不穏な状況にあり、これが岡倉の辞任へと繋がったのです。

岡倉の辞職が発表されると、東京美術学校の教師たちは強い反発の意を示しました。特に黒田清輝が所属していた西洋画科を除くすべての教師が辞職を決議するに至りました。ただし、新校長に努めた高嶺秀夫や監事の久保田鼎といった教授陣が中心となり、留任を働きかけたことで、一部の教授は残ることになりました。

一方で、岡倉の辞職後、学生たちは校内に集まり、岡倉や橋本の復職を求めて激しく議論を展開しました。しかし、文部省の中川参事官が現れ、高嶺を新校長に任命したことを発表したため、騒動は次第に収束していくことになりました。

この際、教授たちの対応は、主に3つのグループに分けることができます。まず、忠実な支持者として硬派とみなされる教授たち（橋本雅邦、西郷孤月など）は、岡倉の辞職に抗議して辞職しました。一方で、準硬派の教授たち（下村観山、本多天城など）は辞職の意向を表明しつつも、内心は留任を望んでいました。そして、軟派と位置付けられる教授たち（高村光雲、石川光明など）は、岡倉の辞職に抗議しながらも留任するという立場を取りました。

その後、岡倉天心は同盟辞職した教授たちと共に、日本美術院を設立する動きへと進展しました。彼らは支持者から資金を集め、自らの美術院を作るために尽力しました。美術院は谷中初音町に位置する岡崎雪聲の土地に建設され、これは新たな美術活動の場となりました。

また、この騒動が与えた影響は、九鬼の妻である九鬼波津子にも及びました。彼女は隆一との離婚が決まり、その後精神的な疾患が悪化していくことになります。1906年には彼女の入院申請書が提出され、最終的には世田谷区の松沢病院に移されることとなりましたが、彼女はその後容態が悪化し、最終的に逝去しました。

美術学校騒動は、単なる教育機関の運営上の問題を超え、日本の美術界に新たな変化をもたらす契機となったことは間違いありません。その後の日本の美術発展においても、この事件がもたらした影響は深く刻まれています。

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